ショップトピックス

「世界初」の技術が生んだ名刺入れ

目の前に木の枝があるとする。拾って二つに曲げると枝はポキッと折れる。木はある程度の角度で曲げれば折れるというのが一般的な考えだ。
だが、この製品はどうだろうか。木が常識では考えられない角度で曲がっている。いや「折れ曲がっている」といっていいだろう。驚くべき形状をした名刺入れだ。

開発したのは新潟県の企業・ストーリオ株式会社。代表の木村氏はかつて家電メーカーに勤めプロダクト設計に携わっていた人物だ。製造業の今後の展望を予測して「木」という素材に着目、またその可能性を感じて独立後に同社を立ち上げた。オーダーメイドで家具等の木材加工や販売を専門にしつつ、自社の技術を生かして数年前にプロダクトブランド「Avan Wood」が誕生した。

この「Avan Wood」を生んだ技術であり、製品として何より特筆すべき特徴が見た目の通り「木を曲げる」技術である。通常木材を曲げ加工するのであれば、ある程度の大きさで、かつ合板・集成材でなければ不可能とされた。だがこれは違う。小さく薄い一枚からなる無垢材を驚くほどの角度で曲げる事が出来る「世界初」の小径曲げ技術なのだ。加工機材の開発等多くの試行錯誤を経て完成したこの画期的なノウハウは自社に新たな事業を生むだけでなく、木材そのものの可能性を大きく広げたに違いない。

また、曲げる技術に付随してもう一つ機能というべき特徴が、カスタネットのように口元が開閉するそのバネ性だ。留めていた紐を解くことで口が自然と開きスマートに名刺を出し入れする事が出来るのだ。
世界初の技術と精密な加工に加え、ポリマー処理を施すことで木材を強化。これにより従来の常識が抱く強度の心配を一蹴する。(無理な使用や高い位置からの落下等、常識的な範囲で取扱に注意する必要はある)更にそれでも心配な声に配慮してメーカー保証も1年付いているので安心して使う事が出来るだろう。

勿論、技術だけでは物は作れない。加工するための木材を得る事もまた製品を生む上で重要な要素だ。
この名刺入れに使われているカエデ材は地元・新潟県糸魚川市の樹齢100年のイタヤカエデ。カエデ材には特徴として杢(もく)と呼ばれる味わい深く美しい光沢がある。これは雪などの影響で木に負荷がかかる事で根本の部分に現れるのだが、全ての木に出来る訳ではなく、杢がある物は銘木とも呼ばれる。加工に適し、かつ雪深い新潟だから生まれたこの木材を山師の協力の下一本一本厳選して製材する事で、この製品に光が与えられるのだ。また地元の素材を生かした製品作りがプロダクトとしての価値をより高めている。

収納可能な名刺は約30枚。封筒のように紐を回し解くことで口を開く。紐は革靴にも使われる丈夫な物を使い、紐を留める釦(ぼたん)には牛革を使用。無駄な装飾はを廃してシックで大人の雰囲気を演出してくいる。素材と製品のディティールだけでなく、紐を解き名刺を取り出すまでの所作までもが美しい。名刺を取り出す瞬間、きっと向かい会う相手に驚きとコミュニケーションのキッカケをもたらす事だろう。
「紐で留めてあるんですか、オシャレですね。」
「そうなんです。しかもこれ木で出来てるんです。」
「えっ!」・・・そんな会話が聞こえてきそうだ。

カラーは、当館ではナチュラル(無地)と黒染め、朱染めの3色。専用の箱付でギフトにもオススメだ。


KaNAM Challenge Wall

ミュージアムショップ企画「KaNAM Challenge Wall」では基本は絵画作品の展示を中心に、他にも立体作品やグッズフェア等、約一ヵ月毎に様々な企画を開催しています。価格帯等、普段アートに馴染みのない方でも購入しやすく、もっとアートを身近に感じて頂ける企画を目指しています。ぜひミュージアムショップとともにお楽しみください。

<Challenge Wallとは?>
企画展の面展示スペースのこと。
本来は棚を設置してグッズを並べる壁面を企画スペースとして設け、また、一般的なギャラリーとは違いグッズに囲まれ色々と制約のある空間での展示は、作家・当館お互いにとって挑戦になるうる事から、「挑戦」=「Challenge」という企画タイトルにしました。
(※「KaNAM」=Karuizawa New Art Museumの略)


日本唯一のサメ革小物専門店「アトリエシャーク」

革製品と聞くと牛革・ワニ革等が一般的だが、今回ご紹介するのは非常に珍しい「サメ」革。日本で唯一のサメ革小物専門店「合同会社アトリエシャーク」のプロダクトだ。

革製品は共通してそれ相応に高価な代物、物珍しいだけではなかなか手が出しにくい。サメ革の、アトリエシャークのプロダクトに詰まった魅力とは一体何か。ぜひご紹介したい。

まずは、アトリエシャークで使われているサメ革について。サメ革でも最高級の品質とされるヨシキリザメ。その中で世界最高品質とされる、日本近海を泳ぐ気仙沼産のヨシキリザメの革を使用している。また、牛やワニのように養殖が出来ないため、供給もなかなか安定しない等、希少性も非常に高い。単に珍しいだけではなく、極めて貴重な代物なのである。

では、実際にプロダクトにおけるその見た目と質感はどうか。これぞサメ肌と感じさせる独特の凹凸模様。まるで水の流れを思わせるような優美な模様がハッキリと浮き出って見える。この模様が非常に高級感を生み、何ともさわり心地の良い質感に仕上がっているのだ。
これ程美しく強調された模様は決して簡単に出すことは出来ない。化学薬品は使わず製造の際は全て植物由来の天然の物を使用。大量生産品とは異なり、時間と手間をかけて作り出しているからこそ素材の良さをここまで引き出しているのだ。

更にサメ革が持つ二つの特性にも注目だ。
一つは耐水性。サメは海の生物ともあって、一般的な革と比べて水に強い。体毛で覆われた動物と違い毛根が無いので水を通しにくいためである。手汗をかきやすい人には嬉しい要素だろう。
それともう一つがしなやかさ。陸上生物と比較して筋繊維が密集しており、柔軟で非常に丈夫なのである。加えて特別な手入れが必要ないので、革製品だからと扱いに不安になる方も安心して使う事ができる。

希少性と品質。素材が持つ特別感と機能性。アトリエシャークのプロダクトはこんなに魅力が満載だ。

そして最後に、物自体の魅力とは少し別の観点になるが、このブランドにおける価値がもう一つある。それは使われているサメ革が宮城県気仙沼市のヨシキリザメであるということ。東日本大震災で被害を受けた気仙沼は実はサメの漁獲量が日本一。そんなサメの町・気仙沼を自分たちにしか出来ない形で盛り上げていきたい。そんな思いを以ってこのブランドが生まれたのだ。
アトリエシャークが拠点を置くのは兵庫県神戸市。かつて阪神淡路大震災で被害を受け、長い道のりと多くの支援の輪によって復興を遂げた町だ。当時そうだったように今度は自分たちが同じように被災地の力になりたい。今後もその思いのもと気仙沼が、そして日本が誇れるような製品を作り続けていくのだろう。

震災という言葉に気負う必要はない。最高の素材と各工程のプロ達が丹精込めて作った素晴らしい製品。手に取った人は製品が持つその良さを感じ、サメの町・気仙沼を知る。まずはそれだけでいいのだ。