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不思議の国のアリス ルイス・キャロル

「不思議な国のアリス」は、イギリス発祥の児童文学。イギリスでは聖書やシェイクスピアに次いで読まれている本と言われるほどです。多数の言語に翻訳され引用や言及の対象ともなっている作品で、日本は勿論ですが世界中でその物語は知られています。
作者はイギリスの数学者チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン。ペンネームのルイス・キャロルとして作品と共にご存知の方も多いことでしょう。

不思議の国のアリス_1

日本でアリスを知ったキッカケとして、実際の作品である「文学」からという方も勿論多いと思います。ただ、内容自体が児童向けということもあり、それ以上にウォルト・ディズニーによるアニメーション映画「ふしぎの国のアリス」(原題:Alice in Wonderland)からの影響も大きいのではないでしょうか。
実際に私自身も書籍でアリスを読んだことがありません・・。私にとって上記映画のイメージが「アリス」そのものといってもいいでしょう。
しかし、アリスについて調べてみると、実はアリスには「不思議の国のアリス」と、その続編である「鏡の国のアリス」があるとのこと。・・・し、知らなかった・・。(ファンの方々にはすみません。)
そして、驚いたことに映画の「ふしぎの国のアリス」はその2つの物語が合わさっているのです。つまり実際のキャロルの作品とは少し内容が異なる訳です。

そのひとつをご紹介すると、映画の比較的初めに出てくるトゥイードルダムとトゥイードルディーという容姿がそっくりで双子の兄弟のような二人。彼らは、原作では鏡の国のアリスに登場します。映画では、ウサギを探すアリスの前に現れ一緒に遊ぶことをせがみます、しばらく一緒に遊んでいるうちに二人だけで遊ぶようになり、その隙にアリスはその場を離れていきます。
このトゥイードルダムとトゥイードルディーとは、元々イギリスの有名な童謡を表しているそうです。内容は以下の通りです。
「トゥイードルディーがトゥイードルダムの新品の玩具を壊してしまい、それに怒って二人は決闘をすることになった。しかし、そこに巨大なカラスが表れて、そのあまりの大きさに二人は恐れをなし、決闘のことなど忘れてしまった。」 何とも不思議で滑稽な歌。
このことから「互いに相争いながらも実際にはよく似ている二人の人物を指す言葉」という意味があるそうです。
ちなみに、実写映画の「アリス・イン・ワンダーランド」では上記の巨大なカラスがジャブジャブ鳥というキャロルが創作した巨大な鳥に変わり、二人を連れ去るシーンがあります。

このように、不思議の国のアリス(及びルイス・キャロルの小説)には有名な童謡やその当時の風刺、それらのパロディなど、いくつもの巧みな言葉遊びが盛り込まれていることが優れた文学の一つとして現代まで親しまれてきた理由の一つだそうです。
こうした彼のユーモアは小さい頃からそのセンスが垣間見えたそうで、12歳のころに学校の寄宿先から弟や妹を喜ばせるために送った物語や詩などを盛り込んだ雑誌にもその片鱗が伺えるそうです。

また、ユーモアだけでなく数学や古典においてもキャロルは幼少から高い才能を示しており、学校では大変優秀な生徒として学校長などからも高く評価されていたそうです。それはオックスフォード大学に入学後も変わらず、数学の試験において優秀な成績を収め「特別研究生」の資格を得ることに繋がりました。この資格は、少額ながら年俸が与えられ好きな研究が保障される、彼にとってこの上ない好条件な資格だったそうです。そして、23歳で大学の数学講師に選ばれ数学者としてもしっかりとした地位を築くのでした。

こうしてキャロルが講師として活動し始めたころ、彼のいたクライスト・チャーチ(学寮)の当時の学寮長が亡くなり、新しくヘンリー・リデルという人がその職に就きます。
彼には男の子1人女の子3人の子供がおり、そのうちの一人、次女アリスとの出会いが「不思議な国のアリス」の誕生に繋がるのです!!

出会いは趣味の写真を撮影しようと学寮を歩いていた時。キャロルは3人の姉妹と出会い、その日をキッカケに彼らは友人となり交友が始まります。そしてある日、ピクニックに3姉妹たちと出かけた際、アリスの為に即興でつくり聞かせた物語こそ「不思議の国のアリス」の誕生の瞬間となったのです。ルイス・キャロルは度々彼女らに即興の物語を聞かせたりすることがあったそうですが、このピクニックの時のお話は登場人物の名前が「アリス」ということもあり、アリス・リデルは特に気に入り本にすることをお願いしたそうです。
そうして、キャロルの手作りの本として書き上げられたのが「地下の国のアリス」と名付けられた「不思議の国のアリス」の原型です。
その物語を読んだ児童文学作家マクドナルド氏が出版することを勧めたことで、キャロルは書籍化することを正式に決めたのでした。

出版に向けキャロルは「地下の国のアリス」から親しい人にしか分からないお話を省き、一般向けの新たな物語を書き下ろします。有名な「チェシャ猫」のお話などもこの時に書書き加えられたそうです。
更に、挿絵にもこだわりをみせます。アリス・リデルに渡した手作りのオリジナル本では自身で挿絵を描いていましたが、出版にあたっては有名な挿絵画家によるクオリティの高い絵を求めたそうです。担当したのはジョン・テニエル氏。その挿絵は、今日では文章と同じくらいアリスのイメージ・世界観を伝える重要な要素となり、ディズニー映画などのその後多くの展開を見せる「アリスワールド」のイメージ形成に大きく影響を与えました。
1865年に出版され、大ヒットとなった「不思議の国のアリス」に続き、1872年には続編となる「鏡の国のアリス」を出版。こちらも同じくジョン・テニエル氏の挿絵を起用し、一万部を超える大ヒットとなります。
その後、物語の舞台化や「幼児のためのアリス」の出版など生前のうちに様々な展開をみせ、今日まで世界中で知られる名作文学となっています。

昨年は「不思議の国のアリス」生誕150周年の記念の年だったそうで、様々なグッズ展開も成されたようです。当館でも以前ご紹介したしかけ絵本のアリスやカードブックなどがございます。中には草間彌生さんの挿絵と装飾を施した草間仕様の「不思議の国のアリス」もございます。日本の現代アートとも繋がったアリスワールドをぜひチェックしてみてください。

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