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East Japan Project

日本人にとっては忘れることのできない、東北地方を襲った巨大地震、東日本大震災。日本中が不安と悲しみに包まれたあの日から、今年で5年目を迎えます。暗闇に落ち込んだ被災地とそこに生活する人々に、少しでも救いの手を、と日本各地から勇気ある声が次々と上がり、沢山の復興プロジェクトが結成されました。今回は、その中の一つである、East Japan Projectをご紹介します。

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East Japan Project(Ejp)は震災後すぐに、建築家である隈研吾氏を中心に発足した震災復興プロジェクトです。複数の販売企業やデザイナーが、東北の伝統工芸職人とコラボレーションをし、「新しい生活」のためのプロダクトを開発して来ました。古くから磨き上げてきた伝統的な技術や素材をそのまま生かしつつも、フレキシビリティが高く用途にあわせてさまざまな使い方が可能な商品を提案・開発をしています。

このプロジェクトを考案し、中心人物となっているのが今話題の建築家、隈研吾氏です。新歌舞伎座、浅草文化センター、スターバックス 太宰府天満宮表参道店、富山市ガラス美術館、帝京大小学校などなど・・・日本国内のみならず海外でも幅広く活躍されている隈氏は、2020年に開幕する東京オリンピックに向けた新国立競技場の改築が、隈氏の設計案によって施されることになり、テレビでもニュースになりましたよね。「伝統的な和を創出する」とテーマ付け、ふんだんに使われた木材が印象的な設計は、実物の完成が楽しみな方も多いはずです。ちなみに、当館に併設されているチャペル「風通る白樺と苔の森(チャペル)」も隈氏による設計で、2015年の5月にオープン致しました。

そんな隈氏が震災後、東北の職人の技が途切れないように、現地の職人さんに少しでも元気になってもらえるようにと結成されたのがEjp。約10点の商品がある中で当館で取り扱っているのは、「NARUCO コケシ ボトルキャップ」と「NARUCO コケシ ライト」の2点。プロダクト、空間、建築、素材開発などでの幅広いデザイン領域で実績があるデザイン事務所、NOSIGNER(ノザイナー)と、宮城県鳴子温泉のこけし職人がコラボして作られた商品です。

「NARUCO コケシ ボトルキャップ」は、こけし職人が持つろくろ引きの技術を生かし、一点一点丁寧に手作りされました。こけしの頭の形をしたこの商品は、使い終わったペットボトルと交換をすることにより、ボトルを再利用することができます。さらさらと気持ちの良い木の質感と、ほどよく手に収まるサイズにより、ボトルの開け閉めも簡単にできます。(※ペットボトルのキャップの大きさにより稀にサイズが合わない場合がございます。)太さの違う2色の線(ろくろ線)でデザインされたそれは至ってシンプルですが、ペットボトルに付け替えた途端に堂々と存在感を放ち、またペットボトルの頭となったその姿はまるでこけし人形のようです。当館ではレッド・ライトグレー、ダークグリーン・ライトグリーン、ターコイズブルー・ダークブラウンの3種類をご用意しております。配色は伝統的なこけし人形に使われる色とは全く違いますが、そこがまた現代アートらしく見るものを惹き付けます。

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2点目は「NARUTO コケシ ライト」。一見普通のこけし人形にも見えますが、下にLEDライトが付いているこけし型LEDライトです。ノスタルジックなこけしが生活用品となり、現代の生活空間にすんなり馴染むライトになりました。こけしの頭の部分がスイッチになっており、頭をカチっと押すと電気が付く仕組みです。とってもシュール!デザインもボトルキャップと同様、ろくろ線でデザインされてとってもシンプルです。ですが、そのシンプルさが古くから受け継がれてきたろくろ引きの技術の美しさを引出し、また生活空間ではインテリアとして魅力を放ちます。

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さらに注目したいのが、職人が一つ一つ手作りで作っているからこそ生じる、「いびつさ」。大きさや形の違い、塗料で引かれた線の濃さ、滲み具合・・・まるで一点一点に表情があるかのようです。「いびつさ」が手作業という特徴を引き立てる中、無垢の木肌に引かれた一ミリのずれのない真っ直ぐなろくろ線は、職人の粘り強さを感じさせます。今や量産してより多くの人の手に渡ることを目的とした商品が多い中、その地に根付いた文化と伝統を受け継ぎ、時間をかけて人間の手で丁寧に作り上げられたこれらの商品は、どこか私たちの心を安心させる不思議な力があるようです。

一度は大きく揺らいだ職人の心とその技術。それが隈研吾氏をはじめとするデザイナーによって職人の心に光を灯し、木肌に真っ直ぐに描かれた線のように、伝統の「線」を再び繋ぎ始めました。時代を越えるごとに新しい技術やアイディアを加え、少しずつ形を変えて受け継がれてきた伝統工芸とその技術。大きな災害により、心にぽっかり穴があいたような私たち人間に、そっと手を差し伸べ勇気づけてくれる伝統工芸に何か力強い魂を感じるのは私だけでしょうか。