紙の可能性 テラダモケイ
<空間と余白を創造・想像する模型>
福永紙工の個性的な製品群のなかでも、一際注目を集めるのが「テラダモケイ」。街路樹やテーマパーク、住宅、オフィスなどの日常風景を1/100のサイズに閉じ込めた、なんとも可愛らしい建築模型用添景セットです。そんなスケールの世界を生み出したのが、今注目を集めている建築家、寺田尚樹さんです。時には建築家、時にはインテリアデザイナー、また家具や小物のデザインも手掛けるプロダクトデザイナーなど、建築家の域を超えて活躍されているデザイナーです。
「添景」というのは、建物模型のスケール感が分かるように付け加えられる紙の人物や動物などのディテールのことで、この「テラダモケイ」の原点は、建物模型をより素敵に見せる「添景」から始まりました。建築模型を作る作業は毎回徹夜で、建物の模型を作り終わり、「添景」を作り始めるころには心も体もヘトヘトになってしまうそう。そんなスタッフを見て、「この添景を量産しておけば、日々の睡眠時間を少しでも長く出来るのではないか・・・」と考え、作られたのが始まりだったそうです。
そのストックが製品化され、今では50種類以上に及ぶラインナップがあります。住宅編から始まった「1/100建築模型用添景セットシリーズ」は今や忠臣蔵や白雪姫、桃太郎などエンターテイメント性溢れるラインナップまで展開しています。当館オススメは何と言ってもスラムダンクのシリーズ!名作者、井上雄彦先生の監修の元作られ、スラムダンクの名シーンを再現できるという、スラムダンク好きにはとっておきの製品です。
さて、この「テラダモケイ」。建築という専門分野で、業務用として開発された、言ってみれば紙製模型キットの一部分。しかし、紙の限界を超えて、今にも動きだしそうな空間を創り出している、なんとも不思議なキットです。
使用されているカラーは基本3色展開。人物もピクトグラムのようないたってシンプルなデザインなのに、なぜかいつまでも眺めていたくなってしまう不思議な世界観があるのです。厚さ数ミリの同じ形をした人物が、枠から切り離され平面に立たされた時、まるで魔法にかけられたかのように一体一体違う人物に見えるのです。建設模型ではあくまでも雰囲気づくりの「添景」だったものが、「テラダモケイ」は主役の建物がなくなっても尚、躍動感にあふれ、見るものに語り掛けてくるようです。
土下座をしている人物や、チャペルで誓いの言葉を述べている人物、自転車をこぐ人物など、たくさんのシーンがある中で、受け止める人が創造的な気持ちになれるような余白が、この「テラダモケイ」にはあると思います。小さく切られた紙に、自由自在にポーズを付け、独自の空間をデザインすることはもちろん、今にも聞こえてきそうな会話や表情を見るものがそれぞれに想像することができるのです。空間の余白を想像で補い、物語を膨らませて自分だけの楽しみ方を発見できるところが一番の魅力だと思います。「テラダモケイ」は、日常生活の喧騒とそこに生活する人々の喜怒哀楽を1/100のスケールに凝縮した建築模型用添景セットです。