【MUSEUM】「自然と対話する 花田和治の世界」展のご紹介 展示室6
開催中の企画展「自然と対話する 花田和治の世界」展を展示室ごとにご紹介します。
展示室6 ユーモアとポエジー
花田の幾何学的でクールともいえる作風は晩年になると少しずつ変化して行きます。
今までは、目で見える風景や人物、物質などを独自のカラフルでシンプルなスタイルとして再構成していましたが、2000年代になると、郷愁、ロマン、詩情、ユーモアを感じさせる作品群が制作されます。
作家としての終盤に、思い出と愛情に満ちた作品が多く制作されたことは非常に素晴らしいことで、この時代の作品は花田芸術の到達点として長く記憶されるものであると言えるのではないでしょうか。

《映美のFANTASY》
深い青にふわりと浮かぶ水色の不思議な形。この作品は窓からみた冬の夜空をモチーフに描かれました。当時、花田と一緒に住んでいた4歳の孫の映美には、月に照らされた雲の形が「逆さまになったゾウ」のようにみえたそうです。花田はそんな孫との心温まるやりとりをユーモアあふれる絵画にしました。窓の桟は画面左の黒い縁取りに、星は赤や青色の粒、月は白い半円となって、絵画という窓の向こうに空想の世界が広がります。

花田和治「映美のFANTASY」2005年 油彩・キャンバス 112.1×162.1cm
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花田和治の世界「自然と対話する」
【MUSEUM】「自然と対話する 花田和治の世界」展のご紹介 展示室4
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展示室4 自然を再構成する
花田は自然の風景を元に多くの作品を制作してきました。初期の写実的な作風は変化して、大型のシンプルで美しい作品として完成に向かいます。
風景を題材とした花田の作品は、頭の中にある空想のイメージを絵画にするという事ではなく、実際に目で見たリアルな風景を独自に再構成して仕上げたものです。
こちらの展示室では、完成した作品に合わせて、その元となった下絵、デッサン、アイデアスケッチ、写真などを展示しています。
花田が見た風景は緻密に計算、構成され、下絵はコンパスや定規で制作されており、自然の有機的なイメージは幾何学的にとらえられ数学的に再構成されています。この過程を見ると、花田は感覚やイメージで作品を作るのではなく、理知的に構成や配色を考えて制作していたアーティストであることが解ります。

《三角山の近く》(SKY-2)
三角山は札幌西区の山の手にある標高300メートルほどの地元の人々に親しまれている山です。登山も愛した花田は、住んでいた札幌から20~30分ほど郊外へ行くと広がる山々を幾度となく描いています。黄緑色に塗られた三角の二つの山、青い空とのコントラストが印象的な作品です。

《三角山の近く》(SKY-2) 1988年(昭和63年)102.0×345.0㎝ 油彩・キャンバス
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展示室3 人物・家族・風景
花田は生涯北海道の自然を愛し、多くの風景を作品のモチーフとして制作をしたアーティストですが、同時に学生時代の友人、美術講師として教えた生徒、北海道で抽象絵画を推進した同志と言える芸術家の友人や作品のファンなど沢山の人との出会いや、家族と過ごした日々、風景の中の人物などを題材に各時代で興味深い様々な作品を制作しました。
この展示室では、花田の子供時代から晩年までの各時代における人物表現や身近な町の風景を描いた作品、文学表現などについて様々な資料も含めて展示して、作家の内面に迫ります。


《地下鉄にて》
花田が描いた多くの人物画の中では最大の作品。
札幌は雪国のため、冬でも移動に困らない地下鉄が発達していますが、そんな地下鉄の扉が空いて女性が降り立った情景が表現されています。
描かれた女性の髪型からモデルは長女の千春さんかもしれません。

花田和治「地下鉄にて」1991年 木炭・膠・アクリル絵具・油彩・生地キャンバス 193.9×130.3cm
《人生》 サンドアートアニメーション SILT
このアニメーションは花田の人生を砂絵のサンドアートアニメで表現したもので、いくつかの人生のエピソードが短い時間に要約されています。
このアニメーションはサンドアート集団「SILT」の代表 船本恵太が花田の作品に共感し、その人生を自分なりの解釈で構築したもので、カラフルな花田作品をあえてモノクロームで表現することで、郷愁に満ちた美しい世界が展開されています。

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展示室5 アトリエの窓から広がる無限の世界
花田の文章にあるように、彼のアトリエには小さな窓がありました。この窓から芸術家は様々な空想を巡らして行きました。
残されたいくつかの作品を見ると、この小さな窓が無限の世界に通ずる入口となり、そこを通じて多様な世界が展開されて行き、それらが様々な作品となって、見ている私たちの空想を膨らましていくように感じます。

《クロッカスの花咲く住宅地》《開かれた窓》
花田のアトリエを出ると小さな庭があり、そこで草花を育てていました。本作はそういった花田の楽しみを表現したものです。
様々な色彩の四角形で構成された作品は初期から続いている花田の代表的なシリーズで、この時期にも窓や庭など身近な風景をこのスタイルで制作していきます。
《開かれた窓》という作品を見ると、初期のフラットな色面で筆触を残さない厳格なスタイルから、画面には筆触なども現れ、もう少しラフで余裕のある表現に変化しています。


花田和治「クロッカスの花咲く住宅地」(上段)「開かれた窓」(下段)いずれも1993年
シルクスクリーン・紙 22.4×18.0cm、 油彩・キャンバス 65.4×130.5㎝
《窓に》
この作品の展示に際し、遺族に確認したところ、当初は作品を所有されていた方の自宅が火事になり焼失してしまったという回答がありました。
その後、所有者の方に連絡していただいたところ、作品が残っているという事がわかりました。
火事で多くの家財や蔵書が焼失した中で、本作品は持ちだされ奇跡的に消失を免れたというドラマがあります。
作品はいつもの抽象的な表現ではなく実際の窓を忠実に描いていたことが写真と対比するとわかります。窓の外には鳥が飛んでおり、のどかな風景の中、遠くを見つめている作家の思いが鳥に託されているような気がします。
所有者の方からは「絵の中の鳥が動いて見える」というコメントがありました。

《窓に》(2003-2005)油彩・キャンバス、72.8×60.0 ㎝、花田のアトリエの窓の写真とともに
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【MUSEUM】「自然と対話する 花田和治の世界」展のご紹介 展示室2
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展示室2 身の回りの景色
東京藝術大学大学院卒業後、ヨーロッパから帰国して取り組んだのは目の前にある身近なものをテーマに4つの色面で構成した連作です。カラフルな配色、極限まで単純化されたフォルムといったその後に様々な形で展開される花田芸術のスタイルはすでにこの時期に出来上がっていたようです。
夜から朝へ広がる風景
身の回りの様々なものを4色の四角形で表現した作品は少しずつ広がりを見せて行き、沢山の四角形で展開する作品が作られ、このスタイルは終生続くことになります。
その後、夜の闇のような暗く、荒々しい「森へ」の連作が始まります。30代に描かれたこれらの暗いアクション的な絵画表現のあとには、花田の代表作ともいえる自然をモチーフにした美しい作品群が展開されていきます。

《ベレーⅡ》
初期の代表作ともいえるシリーズの1作。このシリーズについて花田は「明快な色彩表現と物質感を主題とした“場の絵画”」であると述べています。
言い換えるなら「色や画面構成を、これ以上ないくらいシンプルにした作品が、どこまで展示される場所に訴えかけるか挑戦している」といったところでしょうか。
花田の初期の作品はこのように色数を限定して見せる作風が多いのですが、実はアトリエに残された絵の具は250種類にものぼり、かなりたくさん所持していたそうです。試行錯誤しながら、色を重ね、これぞという色を決めていったのかもしれません。

花田和治「ベレーⅡ」1975年 油彩・キャンバス 90.8×72.8㎝
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