【第6展示室:NFT works】
第6展示室は映像作品が6点並んでいます。右から《ホックニーとロブスター》、《クリプトフィクション》、《グッゲンハイム・ロブスター》、《アルルの寝室》《ロブスター・ディーヴォ》そして《ロブスターの筏》です。この内3つの作品は、他の展示室でも立体作品または絵画として展示されているテーマです。
《ホックニーとロブスター》はコルバートの友人であるデービット・ホックニーと食事をした際に、プレゼントしたロブスターのフィギュアが自宅に帰ってから動き出したという、想定の作品。
《クリプトフィクション》は第4展示室のところでも取り上げた、十字架に括りつけられたロブスターが、宙に浮いてぐるぐると回っている作品です。
《グッゲンハイムロブスター》はコルバートが自身の展覧会を夢見ていたニューヨークの世界を代表する現代アートの殿堂が舞台。ロブスターが美術館の建物を突き破り、カルダーの作品が信号機にぶらさがったり、たった今美術館から出てきた人が驚き逃げまどっています。
《アルルの寝室》は繰り返しコルバートが扱っているテーマで、第5展示室にはこの絵画バージョンが展示されています。同じテーマのデジタル作品であるそれはゴッホのひまわりを被ったロブスター《「ひまわり」のロブスター》が佇んでいます。お馴染みの、でもメタリック加工のこの「アルルの寝室」の椅子の上に立ち、ロブスターの身体全身がスピーカーと化しています。
《ロブスター・ディーヴォ》は80年代に活躍した実在するアメリカのテクノポップミューシャンで、3人組の男性グループ。赤い帽子に黄色いコスチュームが特長です。ディーヴォ(Devo)はコルバートのお気に入りで、念願かなってのコラボ作品です。彼らのミュージッククリップをロブスターたちがそのまま、乗っ取ってしまった様子が展開しています。
最後の《ロブスターの筏》はロブスターのハサミの刻まれた「ロブスターコイン」がロブスターのこぐ筏に降り注いでいます。これは実体のない仮想通貨のコレクターの世界観を表していて、最後のシーンにはコインが消えてなくなる様子が写しだされています。
これら6点の映像作品は、NFT「代替不可能なトークン」という意味を持つ仮想通貨のシステムと同等のブロックチェーン技術を用いた、安易に複製のできない唯一無二のオリジナルアート作品としての価値を持っています。わずか10~20秒の短編の精巧な3Dアニメーション、言い換えれば“動く絵画”と言えます。
第5展示室の映像の部屋で紹介している、《ロブスターポリス》(Lobsterpolis)もオンライン上のコルバートのメタバース:仮想現実空間ですが、実際全世界からアクセスが可能な今なお発展中の仮想都市プロジェクトによるものです。
コルバートはこうして、複数のメディアを駆使していち早く自身の作品世界に最新の技術を取り込み、新時代のアートの可能性を意欲的に探っていることがわかります。