第4展示室は暗い部屋に一点巨大ロブスター。なんと、縛り付けられているようです。
ロブスターの背後にあるものはテレビやタブレットで形作られた十字架!
“Crucifixion”(クルシフィクション)は英語で「磔刑」というはりつけの刑にあったキリストの図を意味しますが、“Criptofixion”(クリプトフィクション)はコルバートによる造語で“キリスト”(Christ)と“スクリプト”(Script)、“デスクリプション”(Description)などの文字情報を表すメディアにあたる言葉のハイブリッドであると推測できます。
背後のテレビからは「現代は情報が多すぎる。それを遮断するためには目を閉じなければならない。」と
声が聞こえてきます。
この作品はかつて世界を席巻していた宗教がいまやデジタル世界が新しい宗教のように君臨していることを意味しています。我々の代わりにロブスターが身代わりとなり磔の刑になっていると同時に、これは我々の姿でもあるのかもしれません。
この十字架に縛りつけられたロブスターの作品にはもう一つ秘密があります。それはこの作品が最初にまずデジタル(NFT作品)の動画として誕生したことです。映像の中の作品が3D、立体作品として今回の展覧会のために作られたわけです。そして、第6展示室の映像作品では十字架に縛り付けられたロブスターを見てわかるように、実は立体作品も回転する想定で作られていました。しかし、10台のテレビと13台のタブレットの重さや設計上のモーターの動力不足などにより停止した状態で立体の方は展示しています。
最後に、コルバートは立体の十字架作品とはここ軽井沢で初めて対面しました。作品自体は台湾で制作され初めて国外に出た先が軽井沢ニューアートミュージアムなのです。作家自身はこの3Dとして現れた作品を前に感無量という感じでリアルに表れた作品の前で記念撮影や動画撮影を盛んに行っていたのが印象的でした。
ここである疑問が生まれると思います。作家本人がこれは作ったんではないのですか?とそれはこう答えられます。コルバートは自身のスタジオをロンドンに持ち、複数の技術者や立体、絵画、デジタルなどの専門のスタッフと共に制作をしています。ですので、もちろん構想はコルバートですが、このクリプトフィクションは台湾にいる職人さんに遠隔で指示を出し、制作をしているわけです。これはアンディ・ウォーホルがかつてファクトリー、つまり作家スタジオを構えて複数のスタッフと共に作品を制作するスタイルを意識しているのかもしれません。
最近のインタビューでこの作品はサルバドール・ダリの《磔刑図》/Crucifixion(Corpus Hypercubes)(1954)
がモデルであることが新たにわかりました!宙に浮いた無傷のキリストが特長的な磔刑図です。