第2展示室に入ると、ルーブル美術館や大英博物館にありそうな大理石の彫像やギリシャの壺のようなもの、それから、ナポレオンを彷彿させる英雄のように描かれたロブスターの肖像画、それに小さなロブスターが隊列を組んでる姿が目を引きます。
コルバートはアンディ・ウォーホル(1928-1987)を敬愛しています。ウォーホルは大量消費社会の象徴である工業製品のロゴやマリリン・モンロー、エルヴィス・プレスリーや毛沢東、坂本龍一など著名人のイメージを機械的に繰り返し作品に使用したポップアートの騎手です。コルバートがそのスタイルだけでなく精神も引き継いでいるのがわかるのがこの部屋です。(最初のお部屋の《花の習作》もウォーホルへのオマージュ作品です。)
今回展示中の大理石の《ロブスター・ザメ》はウォーホルがアート化したBrillo Box(石鹸のパッケージ)に座るサメを被ったロブスター。
《ダーク・ハント・トリプティック》は戦いの歴史画の様にも見えますが、よく見るとネット検索により出てくる大量の芸術家のポートレート:”ゴッホ”や”ダリ”、“ピカソ”、“モディリアーニ”、“ジャン=ミシェル・バスキア”、“フェルナン・レジェ”や”エゴン・シーレ”、”フランシス・ベーコン”の描いた怪物、ミッキーマウスまでもがそこここに描かれています。
また、展示室の正面《ロブスターの肖像画》はマーベルコミックのキャプテン・アメリカの主人公の持つ盾を持ち、フランスの新古典主義の画家ジャック=ルイ・ダヴィッド(1748-1825)のアルプス越えをする騎乗のナポレオンの構図にそっくりです。
この第2展示室には、氾濫する画像のネットの大海を生き抜く現在のコルバートの姿と、ウォーホルの60年代のアメリカ消費社会で生まれた過去のポップアートの精神が融合し、未来の「ネオポップアート」としてここに“ロブスタープラネット”が展開しています。
この展示室全体がまるで、ロブスタープラネット(コルバートの世界観)が天下を統一するまでを表しているようです。
その一方、戦いに辟易した現代社会を映す鏡のようなカオスなのにまとまりを感じさせるのが奇妙です。