ヴェンチューラ展 さいごに

軽井沢ニューアートミュージアムで開催のフィリピン出身のアーティスト、ロナルド・ヴェンチューラの展覧会は、過去を振り返ると同時に未来を見据えたものとなっています。
このタイトルにもある「内省」という言葉は、“客観的に”自分の行動を見つめ直し、考えや行動を変えていくということです。アーティストの過去と未来を見つめると同時に、今、彼がどのように絵画、彫刻、インスタレーションに取り組んでいるのかを、各展示室で示しながら、アーティスト人生の旅路を俯瞰した構成は、タイトル通りといえるでしょう。ヴェンチューラは自己表現のための絶え間ないテイク&リテイクをしているのです。

この展覧会は回顧展ではないとヴェンチューラは指摘しています。
彼の芸術活動の特定の時代が死んで、その残骸を誰もが見られるように展示したものではありません。命の絶えた過去のものを集めた美術館ではなく、何か別のものに進化する過程を捉えた作品の発表の場なのです。そしてその別の生まれる何かは、アーティストさえわかりません。その息をのむような美しさや激動や恐怖は、明日が決めることなのです。

ヴェンチューラ友人、イーガン・ディー・バヤン (アーティスト/ライター)
Karuizawa New Art Museum 学芸員 石川なみ乃(翻訳及び編集)