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「アートはサイエンスⅡ」展 アーティスト紹介 #2 ジョン・ケージ

現在、開催中の「アートはサイエンスⅡ」展に出品いただいている作家さんとその作品を担当学芸員が紹介します!
第2回目はジョン・ケージさんです。

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1912年にアメリカに生まれたジョン・ケージは「偶然性」や「不確定性」を導入した実験音楽によって音楽だけでなく現代の芸術、文化にも大きな影響を与えました。例えば、ピアノの弦の間にゴムや金属等を挟み込んで打楽器のような音響を作り出したり(*1)、コイン投げや易経で音楽の進行を決めたり(*2)。ついには演奏者が音を発しない楽曲《四分三十三秒》を作曲します。実はこの曲、演奏中に会場内で偶然に起こるモーター音などに耳を傾けるため作られました。ケージはその時、その瞬間に世界で起こるあらゆる音を音楽に取り入れようとしたのです。彼は「音を音自身に還そう、かれらは人間ではない、音だ。」と語り、ヨーロッパを中心とした西洋音楽の伝統的な慣習から音を開放しようとしました。彼が見つめていたのはそこに生まれるあるがままの音。普段は雑音とされるノイズにも、まるで掘り出されたばかりの原石のように輝きを見出しました。1966年に発表されたライブ・エレクトロニクス作品《Variations Ⅶ》ではラジオやテレビ、さらには聴覚の限界を超えた脳波までも音源として収集し変換、可聴化しました。テクノロジーを応用して世界に内在する音を取り出し、音を通して自然のあり方を再発見しようと試みたのです。
(学芸員 由井はる奈)

*1 プリペアド・ピアノ
*2 チャンス・オペレーション

9 Evenings: Theatre & Engineering, John Cage, Variations VII. Video film directed by Barbro Schultz Lundestam, from archival footage. Produced by Billy Klüver and Julie Martin for Experiments in Art and Technology, 2008. Courtesy Experiments in Art and Technology

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ジョン・ケージ
1912年ロサンゼルスに生まれる。1934年シェーンベルクに師事。1938年プリペアド・ピアノを考案する。1951年『易経』による作曲を始める。1952年無音の楽曲《四分三十三秒》を作曲。1958年不確定性の作品シリーズを始める。1978年アメリカ芸術科学アカデミーのメンバーに選ばれる。1988年ハーバード大学詩学教授に就任。1992年ニューヨークにて没。

○ちょっと小話
ケージは仏教学者の鈴木大拙から禅を学ぶなど東洋思想に深く関心を寄せていたそうです。
キノコ研究家としても有名で、山にキノコが生えているのを見て「これが音楽だ!」と思ったのだとか。

○もっとジョン・ケージを知りたい方に
『ジョン・ケージ著作選』ジョン・ケージ(小沼純一編)、ちくま学芸文庫、2009年
ケージの世界観を文庫サイズに凝縮。
『サイレンス』ジョン・ケージ(柿沼敏江訳)、水声社、1996年(原著1961年)
ケージ初の著作集。彼の音楽観や芸術観を詳しく知ることができるバイブルです。

○「アートはサイエンスⅡ」展については

こちらから
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今回は《Variations Ⅶ》を展示中。1966年にニューヨークで開催されたイベント「9 Evenings in Theatre & Engineering」で初演された当時のパフォーマンス映像を約2.5×3mの大画面で上映しています。
会場にてぜひご覧ください!

⇒次回は「#3 TETSUYA FUKUI」2018.2.9(金)に掲載予定です。

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