概要
「真実というものは二次元だが、現実は三次元である」
我々の生きるこの世界の「現実」は三次元である一方、自らの目と意識を通して「現実」が「真実」へと変遷した時、その情報は二次元になっている、という意味だ。つまり、「現実」は一つしかないが、「真実」は人の数だけ存在する。それこそがカーノの作品の根底に流れる哲学であり、その様々な「真実」が存在する世界の表現こそ、カーノの美学である。
画材として用いる「蝋」は古代エジプトで遺影を描くのに使われ、現代においても人間そっくりな人形を作る際に素材として用いられる。その質感の持つ独特の風合と透明感は人間の肌の「現実」に非常に近い生命力を持っており、それ故に、鑑賞者の深い「真実」を引き出すことが出来るのである。
今展覧会の為に制作された新作シリーズ「月」の作品群は、カーノのメインコンセプトである「対比」の理念を複数に内在させ、その受け取り方からそれぞれの「真実」を導いてゆく。夜の象徴である月は太陽との対比、衛星としての月は地球との対比、女性の象徴としての月は男女の対比。様々な意味を持つ「月」というモチーフは、彼自身ミュージシャン時代から幾度となく作品のテーマとしてきたものである。伝説のグループ”MECANO”の代表曲は” Hijo de la Luna”(月の息子)であるし、カーノの制作したオペラ”Luna”(月)はスペインで最もヒットしたオペラとなった。
何十年もかけて温めてきたコンセプトである月を作品のテーマに選ぶことはカーノにとって大きな挑戦であり、蝋画という表現における到達点の一つでもある。鑑賞者がこの作品群から自らの「真実」を見出した時、それはカーノにとって大きな喜びとなるだろう。
我々の生きるこの世界の「現実」は三次元である一方、自らの目と意識を通して「現実」が「真実」へと変遷した時、その情報は二次元になっている、という意味だ。つまり、「現実」は一つしかないが、「真実」は人の数だけ存在する。それこそがカーノの作品の根底に流れる哲学であり、その様々な「真実」が存在する世界の表現こそ、カーノの美学である。
画材として用いる「蝋」は古代エジプトで遺影を描くのに使われ、現代においても人間そっくりな人形を作る際に素材として用いられる。その質感の持つ独特の風合と透明感は人間の肌の「現実」に非常に近い生命力を持っており、それ故に、鑑賞者の深い「真実」を引き出すことが出来るのである。
今展覧会の為に制作された新作シリーズ「月」の作品群は、カーノのメインコンセプトである「対比」の理念を複数に内在させ、その受け取り方からそれぞれの「真実」を導いてゆく。夜の象徴である月は太陽との対比、衛星としての月は地球との対比、女性の象徴としての月は男女の対比。様々な意味を持つ「月」というモチーフは、彼自身ミュージシャン時代から幾度となく作品のテーマとしてきたものである。伝説のグループ”MECANO”の代表曲は” Hijo de la Luna”(月の息子)であるし、カーノの制作したオペラ”Luna”(月)はスペインで最もヒットしたオペラとなった。
何十年もかけて温めてきたコンセプトである月を作品のテーマに選ぶことはカーノにとって大きな挑戦であり、蝋画という表現における到達点の一つでもある。鑑賞者がこの作品群から自らの「真実」を見出した時、それはカーノにとって大きな喜びとなるだろう。
アーティスト情報
ホセ ・ マリア ・ カーノ
ホセ・マリア・カーノ(1959〜)は、スペインを代表するアーティスト。「蝋画」として知られる技法に基づいて作られた作品が持つ半透明な奥行きは、絵画よりもむしろ彫刻を思わせる。作品のテーマは人権侵害や売春、金銭の世界を描いたものからコンセプチュアル・アート色の強いものまで多岐にわたる。2000年代初頭に活動開始して以来、世界中のギャラリーや美術館で展覧会を開催し、着実にその評価を高めつつある。現在、ロンドン・マルタ島の2箇所にアトリエを構え、制作活動を行っている。