塩沢かれんによる作品解説

 

【全体のテーマ】

“ 音の海を超えて”

幼い頃の記憶を思い返すと、オルゴールの音色が聴こえてくる。
その音色はやがて光に満ち溢れ、私を時間旅行へと連れ出してくれる。
目まぐるしく変化していく時代の濁流の中で、暗闇の海に現れた光の灯台が一筋の道標を示してくれるように。

今展示では、音にちなんだ作品や幼少期に住んでいたオランダの風景や記憶を題材にした作品が多いです。
作品を通して、人間の記憶とは何か、普遍的で大切なものとは何かについて問いかけたいです。

 

『時間の駅』

未来からの光が差し込む駅のホームでは、
海を超えて、時空を超えてとアナウンスが流れている。

 

『その音が生まれた日』

” ポーーーーンーーーー….ーーーーー..”
ああ、また今日も産声の音色が聴こえてきます。その光り輝く音のかけらは、銀河の彼方へ吸い込まれていきます。

 

『光のエチュード』

星々の衝突が、光に生まれ変わろうとしています。長く続く回廊の窓辺で、新たな光のカーテンが風に揺れていました。

 

『水上のカフェテラス』

青い湖の畔で、真っ白なパラソルの群衆は色とりどりのお茶会を開いていました。
それはまるでパラソルの花畑のような光景で、私はいつまでもその空間に包まれていたかったのです。日常の何てことはない景色も、ほんの少しの魔法の目を通して見ることで、そこは夢の世界への入り口となるのです。

 

『森の中のパンケーキ』

記憶の中にある甘い匂いは、ガラスの森へと私を誘います。

 

【ドローイング作品】

『サザンクロス”10の物語” 星のレール』

“─あの南十字星の先には何があるのだろうか…”

星々が紡ぐ線路を辿って、銀河列車は夜空の終点、 ” 星の果て ” を今日も目指します。

 

【インスタレーション作品】

『Finding the light』

例えば、蝋燭の灯りを見たときに具体的なイメージよりも先に言葉では言い表せないような感情が湧いてきて、後から何かしらのイメージを想像するというような経験はないだろうか。それはまるで現実と夢の間を行き来する感覚にも似ている。

「今見えているこの世界は本当に存在しているのだろうか。
目を閉じたとき、さっき見ていた景色はまだ私の中に存在しているのだろうか。」

光の中に浮かぶ光景は、──── のものなのか。誰かと見た記憶なのだろうか。
それとも忘れてしまったあの頃の思い出なのか。
あなたはこの輝きに目を奪われたとき、何を思い浮かべますか。