#4 展示室4 北海道の自然とともに

展示室4 北海道の自然とともに (1980年代後半)

1980年代後半、花田の絵画はひとつの到達点に達します。

幅3.5mにおよぶ大作《三角山の近く(SKY -2)》(1988年)はその代表作のひとつです。「三角山」は標高311.0m、北海道札幌市にあり、頂上から市内を一望できる山として市民に親しまれています。花田は三角山とその近くにある奥三角山(よこして山)の2つの峰をシンプルな三角形で描きました。また、山を明るい黄緑、空を青の2色だけで表しています。すっきりしたその様からはまるで山間の清涼な空気が漂ってくるかのようです。

1970年代に花田はこう語っています。

「林の中でも並木の道でもいい。樹のそばを通ると、建物や人とすれちがうときにはない、さわやかな気分になるでしょう。樹が枝をはり根をはっている、その充実した存在にふれて、自分の生命感のようなものが滾って(たぎって)くる。ぼくは一本の線をデッサンするときも、一つの色を塗りこめるときも、樹のそばを通るときのような充実感、生命感を画面へ注ぎたい。ぼくはそう思いながら絵を造るのです。」

《三角山の近く(SKY -2)》の2色の色面は山や空といった自然物の形象を得て「場」となり、みずみずしく画中に息づいています。「幾何学的な線と図形」による画面構成や「ハードエッジ」な色面で絵画空間を構築しようとした1970年代の花田の挑戦は、約10年の試行錯誤を経てここに結実したといえるでしょう。充実したこの時期の作品は、現在、《手稲山》(1988年) *1が北海道立近代美術館に、《SKI Ⅱ》(1989年)*2が北海道立釧路芸術館にそれぞれ所蔵されています。

花田はバーネット・ニューマン(1905-1970年)などのアメリカ美術の他にも琳派の先駆者・俵屋宗達(生年不詳、没年1640年頃)や京都画壇の巨匠・福田平八郎(1892-1974年)にも深い関心を寄せていました。花田の、自然の中の対象をシンプルな形に抽象化する絵画にはそうした日本的感性も影響しているのかもしれません。

*1は本展では展示していません。
*2も本展では展示していませんが、同じ絵柄の版画作品を展示しています。

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360°カメラによる展示会場風景

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【作品画像】(上から)
《三角山の近く(SKY -2)》 1988(昭和63) 油彩・キャンバス 102.0×345.0cm
《SKI II》 1989(平成元) シルクスクリーン・紙 37.6×107.0cm