展示室1 花田和治の世界
花田和治(1946-2017年)は1946年、北海道札幌市に生まれました。1965年に東京藝術大学へ入学し洋画家・小磯良平(1903-1988年)に油彩画を学びます。1971年、東京藝術大学大学院を修了した後は1974年に札幌に戻り、その後2017年に没するまで北海道で制作を続けました。
展示室1では1990年代に描かれた花田の代表的な作品、「海」と「波」のシリーズを紹介します。
花田にとって海は特別なモチーフでした。花田の生家は漁業を営む家庭ではありませんが、その家系をさかのぼると、明治時代にニシン漁で栄え、道内に現存する最大規模の番屋で国の重要文化財にも指定されている「旧花田家番屋」を擁した花田家につながります。花田は自分のルーツが海の恵みによって育まれたと考えていたのです。
《波-3》(1990年)は「波」シリーズの内の1点で、横長のパノラマ画面全体にたゆたう波が描かれています。波の描写は単純化されており、白と藍色のコントラストが鮮やかです。花田は風景を描くとき、まず自分でその場に立ちその実感をもとに描いたといいます。この作品がまるで海の中に浮かんでいるかのような体感を呼ぶのはそのためかもしれません。同時に遥かかなたにゆらめく海の情景も思わせます。シンプルな形と鮮やかな色彩で抽象化された花田の作品からは、観る人の数だけ感想が生まれるといえるでしょう。
展覧会最初のこの部屋は、部屋を囲む4つの壁に海を描いた作品を配置して雄大な海に囲まれた北海道を模し、ここから始まる花田和治の絵画世界へみなさまをご案内します。
【作品画像】(上から)
《波-3》 1990(平成2) 油彩・キャンバス 71.0×227.0cm 個人蔵
「波-3」のエスキースⅠ 1990(平成2)頃 水彩・コンテ・紙 33.3×85.5cm 個人蔵
《空に》 1989(平成元) 油彩・キャンバス 65.0×100.0cm 個人蔵