アーティスト紹介 #1-2ミズテツオ

ミズ・テツオ(1944~)

今回展示されているミズの作品《CHA CHA CHA》(2004)に見られる、赤・青・白が横溢した色面、パズルのような配置—これは何を意味するのか。ミズは船舶間のコミュニケーションに不可欠な“国際信号旗”を絵画世界に取り込み、独自の世界を確立。「フラッグ」シリーズは、その瑞々しい感受性で画家の代名詞となる。1980年代から1990年代にかけて欧州で脚光を浴び、イタリア・フランス・スペインなどで展覧会が多数開催された。

「フラッグ」シリーズは抽象画でありながらどこか詩的な抒情をあわせ持つ。抽象の粋を極めた絵肌、曲線・色彩のインスピレーションの源は、船上にはためくフラッグであると同時に、イタリアの広場で明るい太陽の下にたなびいていた万国旗の数々でもあった。抒情性という点では、画家が師と仰ぐモディリアーニや竹久夢二の哀愁を帯びた作風の影響もあろう。そのほか、浮世絵や花札の絵柄といった、日本文化固有の含蓄をも感じさせるマットな質感は、観る者を引きつけずにはおれない。

本展では1990年代から2000年代初頭の代表的な「フラッグ」作品を中心に、現在へ至る抽象化の過程が垣間見られる重要な初期作品《トルソー》(1976)、人物像《少年》(1983)、《ELETTRA》(1987)、立体作品《JAPAN》(1996)、そして日本一の水深を誇る田沢湖(秋田県)の瑠璃色に着想を得た最新作《TAZAWA》シリーズまでを展示。ミズの情緒豊かな世界が堪能できるようになっている。