隈研吾 国立競技場について

【隈研吾展、展示替え後 実は…】

先月の展示替えにより、実は2種類の模型が縮尺の違うものに入れ替わっています。
今回はその模型の写真とともに、それらのプロジェクトのご紹介をいたします。

1つ目は、国立競技場(2020)です。

    

 

東京2020大会に合わせて新たに建設された国立競技場は、建築家・隈研吾氏の設計により、「環境と共生するスタジアム」として生まれ変わりました。
スタジアムの外周を囲むように設置された軒庇(のきびさし)には全国47都道府県から集めた木材を用い、
北海道から沖縄へと日本列島をなぞるように構成することで、地域の多様性と一体感を象徴的に表現しています。
この緩やかな層状のデザインは、伝統的な日本建築の意匠を想起させるとともに、都市空間に柔らかな存在を放っています。

またこのスタジアムの設計には、1964年の東京オリンピックにおいて国立代々木競技場を手がけた建築家・丹下健三氏への深い敬意が込められています。
隈氏は「建築家を目指すきっかけは、小学生のときに見た国立代々木競技場だった」と述べており、その大胆な構造と圧倒的なスケールに心を打たれ、
この体験が建築家という職業の社会的意義を意識するきっかけになったといいます。
隈氏にとって丹下氏は、日本のモダニズム建築の先駆者であり、建築がいかに時代と公共性を背負い得るかを実践してきた存在でした。
自らもまた、丹下氏が築いた建築の文脈の上に立ち、現代にふさわしい公共建築のあり方を模索していると語っています。
1964年と2020年、2つのオリンピックの象徴となる競技場をそれぞれの時代を代表する建築家が手がけたことは、
日本建築の継承と進化の物語としても読み解くことができるでしょう。