第1展示室:具体美術 仲間たちとの出会い

具体美術協会は、1954年に兵庫県の画家、吉原治良が彼のもとに集まった若い画家たちと設立したグループである。「人のまねをするな、今までにないものを作れ」という考えで作品を制作するが、同時代にアメリカやヨーロッパで起こった新しい美術運動に呼応するものでもあった。具体美術協会(以下具体)とは、1956年に発表された具体美術宣言で述べられているように、そのままの物質と向き合う考え方(コンクレートの概念)を強く意識したものである。

具体のメンバー、元永定正は1986年に兵庫県立近代美術館の展覧会「具体 行為と絵画」の期間中に行った講演で具体がどんなグループなのかを以下のような話で説明している。

「例えば、ここにリンゴの絵があるとします。この絵はどんなにうまく描かれていても食べられるリンゴにはなりません。つまり、それはリンゴではなくイリュージョンなわけです。
それでは絵とは何なのかというと、絵の具という化学的な素材とカンバスという布と木材という素材で構成されている物質であるわけです。
僕らのグループはこの物質というもので何ができるのかをいつも考えています。」

具体の若いアーティストたちは、こういった新しい概念のもとでそれぞれ独自に試行錯誤し切磋琢磨して、今までにない独自の表現方法を確立していった。

今回は具体の第二世代と呼ばれ、グループが絵画制作中心に方向を切り替えた頃に加入したアーティスト3人の作品を紹介する。