名坂有子 回転

名坂有子(1938~)のモチーフは回転である。動きのない絵画世界に回転という動きを持ち込んだ作品で、ある意味それは、完結した動き(アクション)であり、その軌跡は時間の痕跡を美しい形で画面に残すことになる。アクションによる絵画と言うとポロックのようなフィジカルで荒々しいものが想像されるが、彼女のアクションはよりオートマチックで洗練されている。なぜ、回転に興味を持ったのか?それは名坂の実家が工場で、回転するガス器具のメーターを作っており、子供の頃にそれを見て育ったという記憶に由来するものであるという。

名坂は回転するものには、どんなものにでも関心を持っているようで、当館を訪れた際、
展示されていたフランスのアーティスト、マルセル・デュシャンの映像作品「アネミック・シネマ」にも大きな関心を寄せていた。今回は名坂の作品と併せて本作を展示する。
この作品も回転による視覚効果が重要な要素であり、名坂の作品と並べて展示した場合の化学反応を体験していただきたい。