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百色―丸嘉小坂漆器店

漆器と聞くと、木地(木を素材とする物)に漆を引いた吸い物碗やお箸といった物をイメージされるのが一般的かと思います。実際に流通している、また、素材として使われる多くは適性面を含め木地やプラスチックです。
特に、京都や会津等、有名な漆器産地の物は木地も高級な木材を使用している物が多く、古くから高級な工芸品として認知され、日本の誇る伝統としてアメリカでは漆を「JAPAN」と呼ぶほど世界的にも有名です。

ただ、伝統と呼ぶべき物の共通点として、その伝統を守っていく取組が重要な課題になります。また、新しい物が常に出続ける世にあって、古い物は敬遠される事も少なくないでしょう。そういった中では時代のニーズに応える取組も必要になってきます。
今回ご紹介する、長野県塩尻市地方の伝統:木曽漆器を家業とする丸嘉小坂漆器店さんもその一つ。

漆器は本来丈夫な物です。また、抗菌性にも優れており、食器として用いることは実に理にかなっている物だそうです。しかし、一方で乾燥や紫外線に弱い点があります。
もっともそういった部分も少しの気遣いで簡単にフォローできるのですが、現代では高級品のイメージも相まってか扱いづらい物として認知されている事も多いようです。
結果、近年は木曽漆器も徐々に衰退の一途をたどっていきます。

そんな中、伝統工芸士である小坂康人さんは今の時代にも受け入れられる新たな漆器の形を見出すべく、約20年前にガラスと漆の組み合わせとなる漆硝子の先駆け「しすいとうよ」を発表します。
通常、木地と違い本来ガラスには漆が定着しづらく、剥がれやすいことからその組み合わせは実用的ではありませんでしたが、小坂さんは試行錯誤の末、耐久性に優れた漆硝子を生み出すことに成功したのです。

その後、更なる耐久性を目指すべく開発を進め、加えて長野県工業技術総合センター等との共同研究を重ねることで, より幅広い用途で使用できる耐久性を持って生まれたのが新たな漆硝子「百色」です。

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ガラスの透き通った綺麗さと、漆による漆でしか表せない艶やかな色彩。ただのガラス食器でもない、従来の漆器とも違う色合いの美しい新たなテーブルウェア。また、デザイナーの協力を得ることで、色彩や耐久性だけでなくデザイン性にもこだわったより美しい形を追求しました。
そして何よりも、丁寧に塗られ、また描かれた一本一本の線たち、職人の手仕事による高い技術力によってこの美しい作品は完成します。

また、実際に従来の漆器食器と異なる点として、一部を除いて器の外側にのみ漆が塗られていることが挙げられます。 これによってガラス・漆それぞれの表情の良さを残すと共に、料理が盛り付けられる面はガラスのため、硬質の金属製カトラリーを使用することができます。かつ、油ものも気軽に盛りつけることができ、剥がれや汚れを気にせず使うことが出来ます。

「伝統を大切にしつつも今の時代に受け入れられる漆の形。」
高いハードルであったその問題は努力と挑戦によりやがて踏み台となり、単に受け入れられるだけではなく更にその上、他にはない新しい美しさを持った「革新」の器を生んだのです。革新の漆器 「百色」をぜひご覧ください。

当館では複数ある百色のシリーズから、3つを選定。

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一つ目は、「揺花(ゆらか)」YURAKA
ゆらゆらと揺れる丸みを帯びたタンブラー。上部にガラス面を残しつつ、2色の漆が綺麗なグラデーションを魅せてくれます。上記の通り、中面には漆が塗られていないため、外から見る漆と、中のガラス越しに見る漆の表情の違いもまた素敵です。
また、中底を覗くと花の「しるべ」が見えますが、これも中面ではなく外に描かれたものです。ひっそりと咲くその花にデザイン性と日本の美意識を感じます。

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二つ目は、「葉輪(はわ)」HAWA
直径約20cmのほどよく縁の反ったプレート。金色で塗られた(描かれた)葉の模様は、その上から塗られた黒と朱の漆によってより際立って美しく見えます。朱と黒の漆を代表する色合いは、高級感ある和の雰囲気を感じさせつつもガラスの持つ透明感が決して和に留まらない幅広い使い方を提案してくれます。

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そして三つ目が、「蕾(つぼみ)」TSUBOMI
幾重もの線が重なることなく職人の手によって描かれた、百色をもっとも代表するであろう器(ボウル)。中を覗けば、外側から丁寧に引かれた線とその上から塗られた漆のそれぞれの色彩によって、まるで美しい花の蕾を連想させます。
当館では3サイズある中で一番小さく可愛らしい大きさをチョイス。冷茶や冷酒など、透き通って見える線が何とも美しく、より美味しく感じさせてくれることでしょう。小鉢としても使えるサイズ感です。