お知らせ

「アートはサイエンスⅡ」展 アーティスト紹介 #3 TETSUYA FUKUI

現在、開催中の「アートはサイエンスⅡ」展に出品いただいている作家さんとその作品を担当学芸員が紹介します!
第3回目はTETSUYA FUKUIさんです。
第5展示室ではジョン・ケージにつづき、実験的な音楽作品を展示しています。
FUKUIさんの《AURUM AETERNUM》もその一つです。
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この作品の中で流れている音楽は、私達が作曲というと思い浮かべるような、溢れ出てきたメロディーを書き留めたものではありません。ではどのように作られたのでしょう?はてさて、今回はその謎を紐解きます。

まず、見慣れない言葉AURUM AETERNUMは、ラテン語で「永遠の黄金」を意味します。古代ギリシャ神話に出てくるミダス王は「触れるものすべてが黄金になってほしい」と願いその通りになりました。でもパンも飲み物も黄金になってしまって後悔したのだとか。「永遠の黄金」はこの神話に由来します。そして、この文字をよく見ると…、

A***M A******M

Aで始まりMで終わる語が繰り返しています。つまりこの楽曲はAmで埋め尽くされている…。まるですべてが黄金になってしまったように。ギターを弾かれる方はお気づきですか?そう、この曲はAmコードでできているのです。さらにAm以外の文字*を数えると9個。正確にはAm9(A・マイナー・ナインス)が繰り返すというコード進行なんです。ドレミで言うと「ラドミシ」。ちょっと影のある雰囲気です。
さらに黄金⇒金貨⇒円という連想から、「黄金比率」や「円周率」を譜面の上に再現。こうしてできた楽曲を映像化したのが本作です。

言葉遊びと数学的な秘密から生まれたこの作品。人の感情とは違った経緯をたどって作られたこの楽曲にはどこか神秘的な響きがあります。音楽はどこまでも自由なのです。
(学芸員 由井はる奈)

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TETSUYA FUKUI

覚醒工房(Kakuseikobo Studio Arts & Music)を主宰。多摩美術大学在学中から、ビデオ、インスタレーション、パフォーマンスの分野で活動。1989年よりヨーロッパを中心に制作発表をしてきたが、2011年の東日本大震災後、活動拠点を日本に戻す。「入力→出力→再入力→再出力の円環」および「アナログ⇔デジタルの変換/再変換」をテーマとして多種多様な作品群を制作し、近年ではカメラを入力装置として用いた作品を制作。年間20~30の展示に参加している。

◯今後の予定
①Paris ReVisited
3月6日~3月18日(12日休廊)
Gallery 和(なごみ)
静岡県伊東市中央町8-3 山梨ビル2階 090-6481-6671

②ジカン ト カタチ
3月24日~4月3日(28日~30日休廊)
art lab Melt Meri
東京都江東区白河1-3-13 清洲寮 208 050-5889-8568

○「アートはサイエンスⅡ」展については

こちらから

◯《AURUM AETERNUM》のサウンドを展覧会紹介VTRで少しだけ聞くことができます。

こちらからどうぞ。
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鮮やかなサウンドと映像の融合を会場にてぜひ!

⇒次回は「#4 ハロルド・コーエン」2018.2.14(水)に掲載予定です。

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「アートはサイエンスⅡ」展 アーティスト紹介 #2 ジョン・ケージ

現在、開催中の「アートはサイエンスⅡ」展に出品いただいている作家さんとその作品を担当学芸員が紹介します!
第2回目はジョン・ケージさんです。

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1912年にアメリカに生まれたジョン・ケージは「偶然性」や「不確定性」を導入した実験音楽によって音楽だけでなく現代の芸術、文化にも大きな影響を与えました。例えば、ピアノの弦の間にゴムや金属等を挟み込んで打楽器のような音響を作り出したり(*1)、コイン投げや易経で音楽の進行を決めたり(*2)。ついには演奏者が音を発しない楽曲《四分三十三秒》を作曲します。実はこの曲、演奏中に会場内で偶然に起こるモーター音などに耳を傾けるため作られました。ケージはその時、その瞬間に世界で起こるあらゆる音を音楽に取り入れようとしたのです。彼は「音を音自身に還そう、かれらは人間ではない、音だ。」と語り、ヨーロッパを中心とした西洋音楽の伝統的な慣習から音を開放しようとしました。彼が見つめていたのはそこに生まれるあるがままの音。普段は雑音とされるノイズにも、まるで掘り出されたばかりの原石のように輝きを見出しました。1966年に発表されたライブ・エレクトロニクス作品《Variations Ⅶ》ではラジオやテレビ、さらには聴覚の限界を超えた脳波までも音源として収集し変換、可聴化しました。テクノロジーを応用して世界に内在する音を取り出し、音を通して自然のあり方を再発見しようと試みたのです。
(学芸員 由井はる奈)

*1 プリペアド・ピアノ
*2 チャンス・オペレーション

9 Evenings: Theatre & Engineering, John Cage, Variations VII. Video film directed by Barbro Schultz Lundestam, from archival footage. Produced by Billy Klüver and Julie Martin for Experiments in Art and Technology, 2008. Courtesy Experiments in Art and Technology

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ジョン・ケージ
1912年ロサンゼルスに生まれる。1934年シェーンベルクに師事。1938年プリペアド・ピアノを考案する。1951年『易経』による作曲を始める。1952年無音の楽曲《四分三十三秒》を作曲。1958年不確定性の作品シリーズを始める。1978年アメリカ芸術科学アカデミーのメンバーに選ばれる。1988年ハーバード大学詩学教授に就任。1992年ニューヨークにて没。

○ちょっと小話
ケージは仏教学者の鈴木大拙から禅を学ぶなど東洋思想に深く関心を寄せていたそうです。
キノコ研究家としても有名で、山にキノコが生えているのを見て「これが音楽だ!」と思ったのだとか。

○もっとジョン・ケージを知りたい方に
『ジョン・ケージ著作選』ジョン・ケージ(小沼純一編)、ちくま学芸文庫、2009年
ケージの世界観を文庫サイズに凝縮。
『サイレンス』ジョン・ケージ(柿沼敏江訳)、水声社、1996年(原著1961年)
ケージ初の著作集。彼の音楽観や芸術観を詳しく知ることができるバイブルです。

○「アートはサイエンスⅡ」展については

こちらから
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今回は《Variations Ⅶ》を展示中。1966年にニューヨークで開催されたイベント「9 Evenings in Theatre & Engineering」で初演された当時のパフォーマンス映像を約2.5×3mの大画面で上映しています。
会場にてぜひご覧ください!

⇒次回は「#3 TETSUYA FUKUI」2018.2.9(金)に掲載予定です。

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「アートはサイエンスⅡ」展 アーティスト紹介 #1 千田 泰広

現在、開催中の「アートはサイエンスⅡ」展に出品いただいている作家さんとその作品を担当学芸員が紹介します!
第1回目は千田泰広(ちだ やすひろ)さんです。
今回出品いただいている作品はインスタレーション《0.04》。ライトで照らされた水滴が重力によって落ちる時、その1滴1滴がレンズとなって展示空間に光と影を映し出します。

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 千田泰広《0.04》

オーロラ、幻日、彩雲、グリーンフラッシュ、蜃気楼、コロナ、薄明光線、ハロ、スカイパンチ、ダイヤモンドリング、ブロッケン現象、ビーナスベルト、地球影、サンピラー。これらの現象を実際に観たことがある人はどれだけいますかね。私はどれもみたことないです。いくつかの偶然が重なることで発生する奇跡的な自然現象は常に人間の意図とは無関係なのです。古くは神の御業として恐れ敬われ、現在でもその遭遇は貴重かつ神秘的であるとされます。さぞ心躍ることでしょう。

 それでも虹はみたことありますよ。みんなあるでしょう。出現率はやや高めの不思議光学現象です。みると嬉しくなりますね。あと朝焼けとか夕焼けとか、空気が澄み渡っている時の空模様とか、夏の入道雲とか。毎日のことだからあまり気にされない方が多いでしょうが、考えてみてください。太陽は燃えているし、星空は地球という星から観た宇宙の景色ですよ。人間が大自然と向き合うときに得る感動は、芸術のそれとはまた異質なものなのかもしれません。しかし、目の前に広がる景色や出来事の美しさ、不可思議さに、静かに沸き上がる衝動、静寂の内に秘めた興奮、あなたの心が拍手喝采、なんていう感動を久しく味わっていますか?
 千田泰広のインスタレーション空間のなかは、私たちにそんな感動を与えてくれるでしょう。その暗闇に心身を染み込ませ、その現象が発現したとき、君の新たなる感覚が疼く。ゾワッとしてください。(主任学芸員 鈴木一史)

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千田 泰広 (ちだ やすひろ)
1977年、神奈川県に生まれる。武蔵野美術大学建築学科専攻。高所登山やケービングなどのフィールドワークを行い、「空間の知覚」と「体性感覚の変容」をテーマに作品を制作。空間の実体化を試みる。近年では2016年チェコ最大の芸術祭「SIGNAL FESTIVAL」(プラハ)に日本人として初選出。2017年種子島宇宙芸術祭(鹿児島)、「アムステルダム・ライトフェスティバルなどに出品。

インフォメーション
○今後の活動
2018.2.24(土)-3.18(日)「シンビズム 信州ミュージアム・ネットワークが選んだ20人の作家たち」
(長野県木曽町、御料館)出品。
2018.3.5(月)-3.23(金)「解体直前 アーティスト・イン・レジデンス in 長野県信濃美術館 」にて公開制作、2018.3.24(土)-3.31(土)作品発表。

○千田泰広 H.P は

こちらから

○「アートはサイエンスⅡ」展については

こちらから

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気になられた方はぜひ会場で体感してくださいね。
ご来館お待ちしています!
⇒次回は「#2 ジョン・ケージ」2018.2.5(月)に掲載予定です。

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「富山水辺の映像祭スフィア2017」受賞作品上映のお知らせ

軽井沢ニューアートミュージアムでは
「富山水辺の映像祭スフィア2017 テーマ:シンクロニシティ‐偶然ではない偶然」の
受賞7作品を以下の会期で無料でご覧いただけます。
日時:2018年2月3日(土)~3月3日(土)
   10:00-17:00
会場:軽井沢ニューアートミュージアム1F 通路

+ほか審査員賞4作品

リンクは⇒

こちらから


2月のワークショップのお知らせ

軽井沢ニューアートミュージアムでは2018年2月10日(土)に
「プログラミングで、軽井沢町を表現しよう」を開催いたします。
詳しくはHPの下記Educational欄でご覧いただけます。

こちらから。
定員満員につき受付を締め切らせていただいております。(1月25日12時半時点)

また、2月24日(土)には当館と佐久市子ども未来館との連携事業として「コラージュであそぼう」ワークショップを
佐久市子ども未来館
にて開催します。詳しくは

こちらから。