お知らせ

ショップからのお知らせ(森岡希世子展 開催情報)

ミュージアムショップにて開催のKaNAM Challenge Wall企画。第13弾「森岡希世子 展」の情報をアップしました。
会期は4月4日(水)~5月14日(月)。伝統工芸士にも認定されたそのろくろ技術によって生み出された磁器の作品。ぜひ実際に手に取って肌触りやその造形美を感じてください。
(※こちらは4月からの企画になります。会期にご注意ください。)

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「アートはサイエンスⅡ」展 アーティスト紹介 #11 河口 洋一郎

現在、開催中の「アートはサイエンスⅡ」展に出品いただいている作家さんとその作品を担当学芸員が紹介します!

最終回は河口 洋一郎(かわぐち よういちろう)さんです。
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「地球最後の人間は、自らが生み出した創造物へと姿を変えた生物に果たして出会う事ができるのだろうか」
〜河口洋一郎と宇宙生物の展示〜

約137億年前、ビッグバンの発生。宇宙誕生。
約46億年前、私たちの住む星“地球”が誕生した。
約38億年前、生命の誕生。はじめましてバクテリアです。
約5億4100万年前【古生代カンブリア紀】水中生物の繁栄。
最古の多細胞生物のひとつ“クラゲ”の存在が確認されている。
約4億7000万年前、生物(植物)の陸上進出。空気最高!!
約2億3000万年前、恐竜の時代到来。
約1億6000万年前、哺乳類誕生。
約6500万年前、突然の悲劇!恐竜の絶滅。
約1000万年前、類人猿登場。おはよう人類。
約7年前、軽井沢ニューアートミュージアムOPEN。
約1年前、企画展「アートはサイエンス」開催。現在PartⅡ継続中。
さてさて、このたびの河口洋一郎の展示室には奇怪な生物が溢れています。
5億年前から現在までの生物の進化を辿る事で予測される、5億年後の生物の姿。
最初に地球上に誕生した原始生物は、微生物や細菌、植物で言うところの藻のような存在。地球上の大気や水質環境の変化とともにその形を変えてきました。繰り返す進化の果てに現在の姿となった生物たち。いやいや“果て”とはまだ言えないでしょう。今現在の姿はあくまでも進化の途中かもわかりません。太陽の寿命はおよそ100億年と推測されており、恒星核融合反応の消失は、太陽の恩恵を受けて育った地球の死を意味します。残る寿命は約55億年。長い年月の中の折り返し地点も近づきつつあります。今後も進化を繰り返していく可能性は十分あり、また適応できずに滅びていく可能性もあります。またクラゲのように原生時代の姿を留め悠久の時を過ごしてきた生物もいます。大気や水質の汚染、自然破壊は地球上の環境を変化させていくことでしょう。それに伴い生存を脅かされている生物も少なくはありません。このさき、それらの事情に適応した身体へと進化していくとしたら、細胞は既に動き出しているのかもしれません。また、なかには地球という星を飛び出し宇宙へと向かう生物も出現するかもしれません。遥か昔、海から陸へと上がった生物たちは、ついに空へと、そして大宇宙という新天地へと旅立つ時がきたのです。それは環境汚染に耐えきれず地球を捨てることを選んだ生物たちなのか、それとも何かの天変地異がきっかけで引き起こされた地球大爆発により宇宙空間にはじき出されたのか。

固そうなメタリックのボディを持つ生物たち。宇宙空間で高速飛来してくる隕石や宇宙塵に備え、守りを強固とした宇宙魚はカニやエビのような甲殻類の外装やハサミを身に付けた。真空のなかでも推進力を得るため、幾重ものパイプ状の触手や、球が連なる複雑な体内構造を有する。これらは河口洋一郎が生み出す空想の幻獣ではない。生物進化の歴史をひも解き、宇宙物理の法則を元に数学的に推測された未来生物の姿なのである。そのため5億年以上先の未来にこのような姿形の生物が棲息しているという僅かな期待と可能性を秘めている。
しかも、今の私たちのは知るよしもないそれら進化した生物たちに河口洋一郎は自らの肉体を冷凍保存し、会いにいきたいと語る。5億年の冷凍睡眠から目覚めた時、地球は無事に存在するのだろうか。人類でさえも今の姿を留めてはいないのだろう。そのような新世界で、河口洋一郎が、自らが5億年前に生み出した新生物たちに囲まれ、満面の笑みを浮かべる。そして両手を前に突き出し、平和の証のピースサインを繰り出しているとしたら、それはなんて浪漫に満ちあふれた芸術なのだろう。と、想像するだけで私の涙腺は崩壊しそうになる、、

(主任学芸員 鈴木一史)

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河口洋一郎
1952年鹿児島県種子島に生まれる。76年九州芸術工科大学(現・九州大学)を卒業。78年東京教育大学大学院(現・筑波大学大学院)修了。2000年東京大学大学院情報学環教授となる(現在に至る)。

1975年初のCG作品《POLLEN》制作。76年本格的にグロースモデルの研究を開始。82年世界最高峰のCG国際学会SIGGRAPH’82(アメリカ)にて論文『The GROWTH Model』発表。84年EUROGRAPHICS’84(デンマーク)で最優秀芸術家賞を受賞。95年ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館代表として参加。2003年「河口洋一郎のサイバーアート展―原始の宇宙」(霧島アートの森、鹿児島)10年ACMSIGGRAPH国際大会ディスティングイッシュト・アーティスト・アワード受賞。2013年芸術選奨文部科学大臣賞受賞。紫綬褒章受章。

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◯「アートはサイエンスⅡ」展は2018. 3. 31 (土)まで!
本展のためだけに作られた河口さんによるインスタレーション。
不思議な宇宙空間をぜひ、ご体感ください!
「アートはサイエンスⅡ」展については

こちらから

⇒展覧会HPでは作家紹介(全11回)を掲載しています。
こちらもどうぞ、ご覧ください!

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「アートはサイエンスⅡ」展 アーティスト紹介 #10 ヤノベケンジ

現在、開催中の「アートはサイエンスⅡ」展に出品いただいている作家さんとその作品を担当学芸員が紹介します!

第10回目はヤノベケンジさんです。
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ヤノベケンジ《アトム・スーツ・プロジェクト‐大地のアンテナ》

整然と並んだ大量のフィギュア。
数体にはガイガーカウンターが付いていて、
自然放射線を検知するとピッと鳴ります。
自然放射線は、宇宙から常に届いているので、
展示室のあちこちでピッピッと聞こえます。

ヤノベケンジさんは、アーティストとして自分自身が「大地のアンテナ」となり、
宇宙からのメッセージを受け取って人々に伝えていきたい、と考えました。

中央には、チェルノブイリへ行った時の写真が広がり、
その上に自作の放射線防護服「アトム・スーツ」を着た作家の姿が立っています。
唱えた念仏の一文字一文字が仏となったといわれる、
空也聖人の立像のポーズです。

子ども時代、大阪万博跡地で遊び、
「未来の廃墟」を見ている気持ちになったとのこと。
“廃墟の中から新しいものが生まれる”と考え、
「妄想」や「サヴァイヴァル」をテーマに制作を続けていました。
しかし、チェルノブイリで見たものは、
廃墟の中で生活する人々の現実でした。

2000年、アトム・スーツのヘルメットを外して作ったこの作品は、
「アトム・スーツ・プロジェクト」の最後の作品となりました。

実際にアーティストが来館して作った空間で、
科学と芸術の転換点を追体験してみてはいかがでしょうか。

(学芸員 菊池夏乃子)

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ヤノベケンジ
1965年大阪府に生まれる。1989年 京都市立芸術大学美術学部彫刻専攻卒業。1991年 京都市立芸術大学大学院美術研究科修了。2008年~京都造形芸術大学教授兼ウルトラファクトリー・ディレクター。2012年京都府文化賞功労賞

1990年《タンキング・マシーン》が第1回キリンプラザ大阪コンテンポラリー・アワード’90グランプリを受賞。1992年「妄想砦のヤノベケンジ」(水戸芸術館、茨城)1994年 ベルリンに滞在。(~1997年)1997年チェルノブイリを訪問。《アトムスーツ・プロジェクト》を開始。(~2003年)「Kenji Yanobe: Survival System Train and Others」(イエルバ・ブエナ芸術センター、サンフランシスコ/カリフォルニア大学美術館、サンタバーバラ、アメリカ)2002年「タイムトラベル・ダブルサイクル・プロジェクト」(イッセイ・ミヤケ フェット、東京)「EXPOSE 2002 夢の彼方へ ヤノベケンジ×磯崎新」(KPOキリンプラザ大阪/横浜赤レンガ倉庫、~2003年)2003年「メガロマニア」(国立国際美術館、大阪)2005年「キンダガルテン」(豊田市美術館、愛知)2007年「トらやんの世界」(鹿児島県霧島アートの森、鹿児島)2009年「ウルトラ」(豊田市美術館、愛知)2013年「あいちトリエンナーレ2013」(愛知県美術館、他)2016年「ヤノベケンジ シネマタイズ」(高松市美術館)

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チェルノブイリ原子力発電所事故から32年。東日本大震災から7年。
今、改めて、この作品を伝えていきたく思います。

◯「アートはサイエンスⅡ」展は2018. 3. 31 (土)まで。
「アートはサイエンスⅡ」展については

こちらから
*展覧会HPから作家紹介#1~9をご覧いただけます。

⇒次回は最終回「#11 河口洋一郎 」2018.3.16(金)に掲載予定です。

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「アートはサイエンスⅡ」展 アーティスト紹介 #9 daisy*

現在、開催中の「アートはサイエンスⅡ」展に出品いただいている作家さんとその作品を担当学芸員が紹介します!
第9回目はdaisy*さんです。

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動く江戸絵巻?

江戸時代の麹町の様子を3DCGで描いた映像作品です。
この町では、一人一人の町民に人工知能が埋め込まれていて、
町民同士がぶつかりそうになると、よけたり、
ぶつかるとお辞儀をしたり。
その場その場でリアルタイムに映像が作られています。
そのため、二度と同じ瞬間はありません。

daisy*は3DCGの制作チームです。
代表の稲垣匡人さんは、舟越桂さんに彫刻を学びました。
テクノロジーを使って、心の深いところを揺さぶるものを作り上げたい、と話します。

展示室いっぱいに映し出された江戸。
時間が経つにつれて、日が沈み、また昇ります。
私のおすすめは夕暮れ時です。
夕日に包まれる感覚を、はるかなる江戸の人々と共有できた気がします。

夜になると、何やら妖しい人影が…
これは見てのお楽しみ。

(学芸員 菊池夏乃子)

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daisy*
2004年「株式会社デイジー」設立。代表:稲垣匡人。3DCGを制作するチームとして創業。2014年「Japan Expo 2014」(パリ)にてゲームエンジンUnityとKinectタイプのセンサーを用いたVR格闘ゲーム《NARIKIRI SHOWDOWN》を出展。「TENT LONDON 2014」にてVRアート作品《HAKONIWA》を展示。2015年「TOKYO DESIGN WEEK 2015」にてKinectのセンサーで特定の動きを検知するロボットアーム《Lazy Arms》を展示する。

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ワンコとニャンコもお江戸の町を歩いています。ぜひみつけてくださいね!

◯「アートはサイエンスⅡ」展は2018. 3. 31 (土)まで!
「アートはサイエンスⅡ」展については

こちらから
*展覧会HPから作家紹介#1~8をご覧いただけます。

⇒次回は「#10 ヤノベケンジ 」2018. 3. 12 (月)に掲載予定です。

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