「アートはサイエンスⅡ」展 アーティスト紹介 #8 松岡 亮
現在、開催中の「アートはサイエンスⅡ」展に出品いただいている作家さんとその作品を担当学芸員が紹介します!
アナログテレビとテクノミュージック。新しいのにどこか懐かしい。
第8回目は松岡 亮(まつおか あきら)さんです。
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かねてから、金属の廃材など廃棄物による音響作品を手がけてきた松岡さんは、近年、アナログテレビによるテクノイズミュージック、インスタレーションを軸に活動しています。
日本では2011年にアナログ放送が終了し、地上テレビ放送はデジタル放送に移行しました。それに伴い廃棄物となったアナログテレビの発する音をテクノミュージックにしているのです。
ライブなどでは大小さまざまなテレビを使いますが、今回の展示はポータブルアナログテレビのみ、約20台によるサウンドです。実はテレビに通電した際に発せられるノイズ音は個体によって違います。松岡さんはそこに電圧制御のみを加え、テレビの発する音そのものを活かしながらそれらを組み合わせます。さらにシーケンスパターンを任意で設定し、それらがずれ込みながら絡み合い、リズムパターンが微妙に変化していくサウンドを生み出しました。
日々の暮らしの中で、私達が出会う一瞬はその時にしか訪れません。しかしまた、時の流れの中で、かつて出会った一瞬に似た一瞬を感じることがあります。繰り返し、違いの中で重なっていくその感覚に、このサウンドはよく似ています。
いずれその存在が地上から無くなるアナログテレビ。この失われゆく音の発見を音楽へと導く彼のサウンドには、どこか静かな詩情があり、と同時に、物体が発するがゆえの確かな手触りがあります。
(学芸員 由井はる奈)
松岡さんはレーベルVLZ PRODUKTを主宰。サウンドアート、ノイズなどの実験音楽に関する音源の制作/販売も行っています。また、Edition cocoaraとして、金子智太郎・畑中実主宰の「日本美術サウンドアーカイブ」に関するエディション制作、自身が企画した展覧会のエディション制作(稲憲一郎、高見澤文雄、佐藤実、中山晃子他。)を手がけるなど、幅広く活動されています。
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松岡 亮 (まつおか あきら)
1974年青森県出身。2008年実験音楽レーベルVLZ PRODUKTを開始。VELTZ名義で自身の音楽活動もスタートさせる。アナログテレビインスタレーションを2011年 (現代ハイツ、池ノ上) より、13年(巷房、銀座) 16年(Art & Spaceここから、南青山)、17年(東京国際フランス学園、KOMAGOME1-14cas)に開催。2012年 Omega PointよりVELTZ名義のソロアルバム「アナログテレビに捧ぐ」をリリース。2017年伊東篤宏 ×カイライバンチ ×VELTZ(松岡亮)コラボレーションインスタレーション(ゲーテ・インスティトゥート、東京)
◯今後の予定
・新作CD「Broken TV Audio Report」リリース!
2018年2月、サウンドアーティストであるイギリスのStephen Cornfordが運営するconsumer wasteから、VELTZ名義による新作CD「Broken TV Audio Report」がリリースされます。これは2011年の地上波デジタル完全移行時から2017年までに録音された、アナログテレビが発する様々なサウンドを採取したもの。一聴してテレビからのサウンドとは思えないテクノイズ、アンビエントノイズ、リズムトラックが収録された充実盤になっている。オーバーダビングなどの加工は一切無しの、廃棄され行くアナログテレビのサウンドドキュメント。
・年内には関西在住のアーティスト石上和也氏のレーベルからのリリース、ricercasonoraからのThe New Blocaders35周年トリビュートコンピレーション3CD参加(Thurston Moore, Jim O’Rourke他)など、リリースが続く。
動画はこちら! ↓ ↓ ↓
○「アートはサイエンスⅡ」展については
こちらから
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クールでいて懐かしい、テクノサウンドをぜひ会場で!
⇒次回は「#9 daisy* 」2018.3.8(木)に掲載予定です。
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