企画展「前川 強  ドンゴロスは生かされている。 色と形と物質による純粋抽象表現で発言する。」

1936年大阪に生まれた前川 強は、1962年から前衛芸術グループ「具体美術協会」に参加し「具体」の第二世代の中心として活動しました。前川は麻袋の材料である目の荒い厚い布“ドンゴロス”に着目し、それらを裂いて襞(ひだ)をよせ画面に定着させた、絵画と立体造形の要素をあわせもつ表現を生み出しました。

具体美術協会発足時、主宰の吉原治良(1905~1972)は芸術作品に付随する物語性を排除して、素材そのものの重要性を標榜しました。前川は当時吉原が掲げた「物体に生命を与える」(「具体美術宣言」1956年)という思想を実体化した作家といえるでしょう。

具体が解散した1972年以降も前川は一貫してマテリアルにこだわり、繊維の細かな柔らかい麻布や綿布といったさまざまな布を駆使して作品を生み出してきました。また、デザイナーでもある前川は、図形や色彩から造形の探求を行うデザイン性に優れた実験的作品も残してきました。近年は再びドンゴロスを用いて、素材の野性味と洗練された造形を融合させた新たな展開をみせています。

作品は世界での評価も高く、英国のテート・モダンをはじめ各国の美術館にコレクションされており、数多くの賞を受賞しています。

本展では、初公開の最新作をはじめ2000年代以降に制作された近作を中心に、今もなお精力的に制作を続ける作家の現在を紹介します。