小林エリカ: Trinity -トリニティ-

期間 : 2017年11月29日 - 2018年01月14日
開催時間 : 10:00 - 17:00 
会場 : 1階ギャラリースペース Gallery 2&3

インフォメーション

期間
2017年11月29日 - 2018年01月14日
会場
1階ギャラリースペース Gallery 2&3
開館時間
10:00 - 17:00

休館日
毎週火曜日
臨時閉館・開館のお知らせ
2017.12.26–2018.1.1(長期休館)
料金
入場無料
作家在廊日
12月2日(土)
お問い合わせ先
軽井沢ニューアートミュージアム
Tel. 0267-46-8691
ギャラリー担当

概要

ホワイトストーンギャラリー軽井沢では小林エリカ展『トリニティ』を開催致します。トリニティとは本来「三位一体」、キリスト教で神 (キリスト) の三つの側面を表わしますが、今展で作家が指し示すのは、1945年世界で最初に原子力実験が行われた場所—アメリカ合衆国ニューメキシコ州のホワイトサンズ・ミサイル実験場の中にある場所の名でもあります。
小林はその不可視性ゆえに放射能に惹きつけられ、文学やアートを通して表現することを試みてきました。ラジウムは世界ではじめて人の手によって取り出された放射性物質ですが、その半減期は1601年。そうなるとマリとその夫ピエール・キュリーによって1902年にその手に取りだされたラジウムの放射線量が半減するのは3503年の未来になります。作家にとって放射能や放射性物質の是否を問うことは本分ではありません。むしろ関心は、その歴史をふり返り、未来に生きる人たちが、今を生きる私たちをどう捉えるかに想いを巡らせることにあります。
様々なメディウムによって表現された放射能は、私たちに生と死について考えさせます。過去の人間がもし違った選択をしていたら、私たちの現在の暮らしはどうなっていたのか。なぜ核爆弾は殺戮のために地上へ落とされ、なぜ今放射能に怯えながら生きなければならないのか。過去の歴史が変えられないなら、未来のために私たちは一体何ができるのか。小林エリカの軽井沢におけるこの示唆に富む展示を、是非ご高覧下さいますようご案内申し上げます。


関連イベント

小林エリカTrinity展 特設ページ
Reception: 2017.12.2 (Sat) 16:00–18:00 food + thingsによるドリンクつき(なくなり次第終了になります)

メッセージ

トリニティ。父と子と精霊。キリスト教の三位一体を表す言葉。
そしてそれは、アメリカ、ニューメキシコ州、ホワイトサンズ・ミサイル実験場の中にある、
世界ではじめての原爆実験が行われた場所の名でもある。
なぜ、その場所が、その名で呼ばれることになったのかは、諸説あって定かではない。
それは、ロスアラモスの近くにあるインディアンたちも寄りつかない魔の山の名に由来しているだとか、
原子爆弾がまさにちょうど三個
(実験のためのガジェット、広島に投下されたリトルボーイ、長崎に投下されたファットマン)
完成されようとしていたからだとか。
アメリカの原爆開発計画、マンハッタン計画を率いた科学者ロバート・オッペンハイマーも後年、
それを思い出そうとするが、やっぱりそれをはっきりとは思い出せない。
しかし確か、その名を名づけた時、ジョン・ダンの詩が頭のなかにあった、とだけロバートは答える。
  私の心を叩き割ってください、三位一体の神よ。
  これまで、軽く打ち、息をかけ、照らして、私を直そうとされたが、
  今度は、起き上がり立っていられるように、私を倒して、
  力一杯、壊し、吹き飛ばし、焼いて、造りかえて下さい。

引用:「ジョン・ダン詩集」湯浅信之編 岩波書店


プロフィール

小林エリカ 1978年東京生まれ。2014年小説「マダム・キュリーと朝食を」(集英社)で、第27回三 島由紀夫賞・第151回芥川龍之介賞にノミネート。 著書には、短編小説集「彼女は鏡の中を覗きこむ」(集英社)、父とアンネ・フランクの日記をモチーフにしたノンフィクション「親愛なるキティーたちへ」、放射能の歴史を辿る コミック「光の子ども1.2」(共にリトルモア)、作品集「忘れられないの」(青土社)など。 展覧会は、個展に「彼女は鏡の中を覗きこむ/庭」(GALLERY360°)、The Futureと の“Your Dear Kitty, the book of Memories(” Lloyd Hotel and JCC in Amsterdam)、グループ展に“The Radiants” (Bortolami Gallery, New York)、「ここに棲む ― 地域社会へのまなざし」(アーツ前橋)、「六本木クロッシング2016: 僕の身体、あなたの声」(森美術館)他。

目に見えない物、時間や過去、家族や記憶などをテーマに、小林はその痕跡をモチーフとした作品づくりをしています。
近年は、科学者マリ・キュリーにより名づけられ、やはり目には見えない「放射能」を主題とし、その歴史をめぐる小説やマンガを発表してきました。
また、同時にインスタレーション作品も手がけ、ニューヨークをはじめ国内外の展示に参加してきました。
今回、小林による、はじめてのミュージアムでの個展になります。 ウランガラスを用いた新作なども発表予定です。
ぜひご覧いただければ幸いです。

小林エリカ


*小林エリカTrinity展に向けてのインタビュー


協力

GALLERY360°、LUFTZUG、妖精の森ガラス美術館、Printilo Yuka
Translated by Brian Bergstrom / DM designed by Mina Tabei