概要
海老原露巌は、書道を基礎に置く現代アーティストであり、その作品は革新性と古典的な美を融合している。これを鑑賞することは、未来の中に伝統な美を発見する行為でもあり、我々に新鮮な感動をもたらす。本展示会は、そのような海老原の作品を紹介することを目的として企画されたものである。
海老原は1961年栃木県に生まれた。幼い頃から書に非凡な才能を発揮し、その後古典書道に傾倒した彼は書道家の道を進む。一方でセザンヌ、ピカソ、ポロックなどの近現代芸術も愛好しており、海老原の作品は伝統の枠に収まらない。その実力は国内外で広く認められており、例えば、文化庁文化交流使に任命され、国費でイタリアの大学で講義を行った経験を持つ。また、その「書」は在フランス日本大使館の他、中国西安の歴史博物館や昭陵博物館にも所蔵されている。中国が書の本場であることを考えると、これは驚愕に値する。更に「抽象絵画」もイタリア大使館に所蔵されるなど枚挙にいとまがない。
書道は伝統的な芸術ではあるが、一部書道家は、西洋の近現代芸術の影響を受け、前衛的な作品を生み出してきた。海老原もこうした流れには属するが、彼の作品は伝統を否定するものではない。「枝花(えか)」という作品を見てみよう。これは、花という文字を書いた作品であるが、その揺らぐ線は、梅の咲く枝ぶりの素描にも見え、現代的だ。その一方で、その空間構成は古典的な均衡美を有している。また、海老原は書道の可能性を信じる作家でもある。彼の抽象絵画作品である「コズミック・ダンスII」を見てみよう。これは、素粒子のざわめきを幻視したものだ。墨と筆が描き出す線は、フラクタル性を孕み、やはり均衡を維持している。
つまり、海老原は、伝統の破壊者ではなく、書道をそして書道の手法を通じて、革新性の中に伝統的な美を、刷新し再生する擁護者なのだ。
小川晴也(美術評論家)
海老原は1961年栃木県に生まれた。幼い頃から書に非凡な才能を発揮し、その後古典書道に傾倒した彼は書道家の道を進む。一方でセザンヌ、ピカソ、ポロックなどの近現代芸術も愛好しており、海老原の作品は伝統の枠に収まらない。その実力は国内外で広く認められており、例えば、文化庁文化交流使に任命され、国費でイタリアの大学で講義を行った経験を持つ。また、その「書」は在フランス日本大使館の他、中国西安の歴史博物館や昭陵博物館にも所蔵されている。中国が書の本場であることを考えると、これは驚愕に値する。更に「抽象絵画」もイタリア大使館に所蔵されるなど枚挙にいとまがない。
書道は伝統的な芸術ではあるが、一部書道家は、西洋の近現代芸術の影響を受け、前衛的な作品を生み出してきた。海老原もこうした流れには属するが、彼の作品は伝統を否定するものではない。「枝花(えか)」という作品を見てみよう。これは、花という文字を書いた作品であるが、その揺らぐ線は、梅の咲く枝ぶりの素描にも見え、現代的だ。その一方で、その空間構成は古典的な均衡美を有している。また、海老原は書道の可能性を信じる作家でもある。彼の抽象絵画作品である「コズミック・ダンスII」を見てみよう。これは、素粒子のざわめきを幻視したものだ。墨と筆が描き出す線は、フラクタル性を孕み、やはり均衡を維持している。
つまり、海老原は、伝統の破壊者ではなく、書道をそして書道の手法を通じて、革新性の中に伝統的な美を、刷新し再生する擁護者なのだ。
小川晴也(美術評論家)
アーティスト情報
海老原露巌
1961年栃木県下野市生まれ。4歳より書を学ぶ。作品は在フランス日本大使館、在日本イタリア大使館、中国挟西省歴史博物館、カナダケベック州立文明美術館等に収蔵され、近年はパリ日動画廊、新宿伊勢丹にて展覧会を開催する。
国際的な評価も高く、各地で個展を開くほか、映画、舞台作品、TV番組、書籍の題字制作、多数手がけ、国内外各地で書道揮毫パフォーマンスを開催する。(明治神宮、中国西安碑林、中国大興善寺、中国西安太宗皇帝昭陵)
2012年には文化庁文化交流使として任命され、イタリアの大学(ローマ大学、ミラノ大学、ヴェネチア大学)にて書講義やワークショップを開催し文化交流を図る。
またイギリス、フランス、中国にても同様に各大学等にて書道を通じての文化交流活動をする。
現在国内では「書巌の會」を国際文化会館にて主宰し後進の指導を行っている。