#3 展示室3 作家の横顔

花田和治はどんな人物だったのでしょうか。
この部屋では、花田の10代~20代の作品や版画、関連資料を通してその人物像を紹介します。

この部屋の入口から左手の最初に展示している水彩画《無題》(1952-55年頃)*1は花田が小学校低学年頃に描いた作品です。5人の子どもが雪合戦をしている様子が描かれています。花田はこの絵を大切にし、晩年までアトリエに飾っていました。その隣にある《北大第二農場》(1961年)は花田が高校1年生の時に初めて描いた油彩画です。

男性の上半身を描いた《無題》(1964-1965年頃)は美大受験のための予備校時代、セザンヌを思わせる《無題》(1969年)は東京藝術大学に入学し洋画家・小磯良平(1903-1988年)の授業で描いたものです。学生時代の作品では、シュルレアリスム、キュビズム、フォービズム、抽象表現主義の影響を受けたものも残っており、この頃、花田がさまざまな絵画表現を学んでいたことがわかります。

花田は油彩画だけでなく版画も手掛けました。
《休日》(1967年)*2は大学在学中に制作した最も初期の銅版画のひとつです。蝶のような不思議な形のモチーフは晩年のユーモラスな油彩画に通じる、花田の本質を伝える貴重な作品といえるでしょう。

長方形の中に規則正しく斜線を描く銅版画《無題》(1971年)*3は大学院を修了した年に作られました。この頃の作風について花田は「幾何学的な線と図形による感情と知覚の関係性をテーマにした構成の絵画」と語っており、この作品もそのひとつと考えられます。花田は学生時代にさまざまな作風を試みましたが、その後、シンプルな図形的表現を自らの画風として作家の歩みを始めたのです。

本展ではご遺族、関係者の協力のもと、花田の生前のスナップ写真などを展示しています。札幌市内から臨む手稲山や自宅の窓からみた雲など、作品につながる風景写真も残っており、花田が日常の中からモチーフをみつけていた様子がよくわかります。

花田が生前使っていた画材道具もあわせて展示します。花田は画材道具にもこだわりがあり、絵の具は特に「ウィンザー&ニュートン」を好みました。また、柄の塗装が擦り切れた何本もの絵筆は花田が制作に費やした時間を物語っています。

*1~3は前期のみ展示。

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360°カメラによる展示会場風景

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【作品画像】(上から)
《無題》 1952-55(昭和27-30)頃 水彩・紙 26.0×36.0cm
《北大第二農場》 1961(昭和36) 油彩・キャンバス 37.0×45.0cm
《無題》 1964-1965(昭和39-40)頃 油彩・キャンバス 53.0×41.0cm
《無題》 1969(昭和44) 油彩・キャンバス 72.5×91.5cm
《休日》 1967(昭和42) エッチング、紙 13.0×9.0cm
《無題》 1971(昭和46) ドライポイント・紙 44.5×29.5cm