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『シュルレアリスムとは何か 超現実的講義』

巖谷國士/著者
ちくま学芸文庫/出版 

2階の美術館で今月から新たに始まった企画展、「シュルレアリスムとその展開 マックス・エルンスト 上原木呂-特別招待:ヤン・シュヴァンクマイエル-」。ドイツ人画家でシュルレアリスムを代表する一人であるマックス・エルンストをはじめ、エルンストのコラージュ・ロマン『百頭女』に衝撃を受け、日本でシュルレアリスムの本質を追究し続けてきた上原木呂、そして同じくしてエルンストから影響を受けた、チェコ出身のシュルレアリストであり映画監督でもあるヤン・シュヴァンクマイエルを特別招待として迎えました。

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さて、ここまでで「シュルレアリスム」、「シュルレアリスト」という言葉を何度も繰り返してしまいましたが、このワードが本展では非常にキーポイントとなっています。ですが「シュルレアリスム」と聞いて皆さんは何のことだかお分かりになりますか?ちなみに私は、本展が始まったことによって初めて知ることばかりでした。シュルレアリスムという言葉に初めて出会う方や、聞いたことはあるけれど意味をよく理解できていないかも、という方にぜひおすすめしたい一冊がこちら、著者、巖谷國士氏による『シュルレアリスムとは何か 超現実講義』です。

講演形式の説明文が読みやすく、単刀直入に「シュルレアリスムとは何か」を順序だてて説明してくれます。では、本書の紹介を交えながら、少しだけシュルレアリスムという概念について触れてみようと思います。

シュルレアリスム。似たような響きに「シュール」という言葉がありますが、このワードは皆さん聞いたことがありますよね。「それシュールだね」なんて使ったり、テレビやコマーシャルなどの広告媒体でもよく耳にします。実は、もともとはシュルレアリスムという言葉が原点なのですが、それを日本人独特の言葉のアレンジで「シュール」と延ばして短く使われるようになりました。この場合、「現実離れした」とか「奇抜で幻想的な」という非日常的、非現実的なものや事柄を指す意味合いで使われますが、しかし、この意味はシュルレアリスム本来の意味とは全く異なるのです。

ではシュルレアリスムの本来の意味とは?
日本語では一般的に超現実主義と訳されますが、この「超」を正しく理解することがどうやらキーポイントになるようです。「超」には大きく分けて意味が二通りあります。一つは「超える」「超脱する」という何かを超えて離れるという意味。もう一つは「過剰」「強度」を意味する場合。例えば、超満員電車や超カワイイなど、「とても」というニュアンスで使われる場合です。超現実主義の「超」は、後者の「強度」「とても」という意味が正しい使い方なのです。そのため超現実主義とは「強度の現実」、言い方を変えれば「現実以上の現実」という解釈になります。ここで「超」を前者の「超脱する」という意味で理解してしまうと、現実を超えて、現実から離れた別の世界、つまり私たちが誤って理解してしまいがちな「シュール」という別の解釈になってしまうのです。シュルレアリスムとは現実の外にあるワンダーランドや空想世界のことではなく、あくまで現実に立脚しているのです。

何度も繰り返される「現実」というワードがとてもややこしいですよね。さらに「?」にさせるのが「強度の現実」「現実以上の現実」という表現。一体何のことでしょうか?一言で言ってしまえば「無意識の領域」です。9時になったからあのドラマを見よう、今日は寒いからマフラーをしようなどの行動は意識的に行いますよね。これに対して、呼吸や瞬き、睡眠中に見る夢は無意識的な行動と言えます。この無意識の領域でこそ人間の最大の力が発揮されるのではないか・・・そう着目し、我々人間によって作りだされた美学や道徳的先入観などのリミテーションから解き放たれ、理性による支配がない無意識の世界を表現しようとしたのがシュルレアリスム、超現実主義なのです。

学校では、絵を描くときは綺麗に描きましょうと教わりましたし、普通なら見てもらう人に綺麗だなとか上手だなと思ってもらえるように色や描くものを選ぶものです。しかし、シュルレアリストは題材も配色も配置も決めず、何も考えず、自然と手が動くままに描く手法「自動記述(オートマティズム)」によって作品を生み出したりもしています。

以上がざっくりとした「シュルレアリスムとはなんぞや?」という説明でした。皆さま、何となくでもご理解いただけたでしょうか?私自身も本を読みながら、当館の学芸員に質問をしながら勉強中ですが、ほんの少しでも新しい知識が入るだけで作品の見方が変わり、鑑賞がより楽しくなるものです。今回は簡単な説明しかしませんでしたが、本書にはより詳しい内容が盛り込まれています。シュルレアリスムとはなにかに始まり、メルヘンとは?ユートピアとは?と展開する内容はとても興味深く、ご興味のある方にはぜひおすすめしたい一冊となっています。

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