ロナルド・ヴェンチューラ《無題》(キリスト磔刑図)2021年

ロナルド・ヴェンチューラ《無題》(キリスト磔刑図)2021年についてご紹介します。

西洋宗教絵画の代表的な題材である磔(はりつけ)の刑を受けるキリストの姿を取り上げています。キリストの頭上にはCLASSICの文字が看板のように表され、金属製の棘でその表情は隠され、キリストのまわりには天使の代わりに羽の生えた宇宙飛行士、恐竜かサルの親子の骸骨、漫画のようなシンプルな線で描かれたバナナを持ったサルのキャラクターと様式化された木、ギリシャ建築の柱が配置されています。

ヴェンチューラは古典的な宗教絵画のスタイルに現代社会の諸様相を巧妙に盛り込むことで別の意味を持つ図像に置き換えてしまいました。古典絵画の題材である永遠の敬虔さはここでは別の意味を持たされ、現代社会の様々な記号のひとつとして呈示されています。

フィリピンは国民の90パーセント近くがカトリックの信者です。スペインやアメリカ、日本に占拠されてきた歴史があり、複雑に感じる部分もあります。様々なカルチャーを受け入れ、ミックスすることはその歴史と共にあり、「フィリピン的」といわれる“サービス精神が旺盛で、ホスピタリティがある” 特徴をヴェンチューラは批判精神を持ってこの作品に描かきだしていることがわかるでしょう。

 

《無題 》2021年 油彩・キャンバス 304.8×213.4㎝