作品紹介 #1-2 展示室1 ドンゴロス  Work (No.161244)


Work (No.161244), 2015-16, 162.0×195.0cm, ドンゴロス、油彩、アクリル

展示室1では、前川 強の代表的な作風である「ドンゴロス」による絵画を紹介します。


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ドンゴロスとは麻袋を作る目の荒い厚手の布で、前川がこの素材を使い始めたのは高校生の頃でした。前川は友人と共にモダンアートクラブを創り学校の廊下にドンゴロスで作った作品を展示していたといいます。(*1) 1955年に大阪市立工芸高等学校の図案科を卒業した前川は、翌年、「具体美術協会」(具体)のリーダー・吉原治良(1905~1972年)に出会います。具体は1954年に結成し主に関西で活動した前衛芸術グループで、初期のメンバーには足で絵を描いた白髪一雄や絵の具を瓶に詰め投げつけて作品とした嶋本昭三らがいました。会員として集った若者たちを吉原は「人のまねをするな」、「これまでになかったものを作れ」と鼓舞しました。当時の美術界は暗く重い作風が多かった中、前川にとって、具体会員の作品は「ドライですこぶる明るく、デザインの世界と思われるほどキラキラしてみえた。」(*2)といいます。具体の設立から8年ほど経った1962年に、前川は具体に参加し吉原の教えを実践していくようになります。

具体に入った前川は、ドンゴロスの布地を細く切りヒダ状に盛り上げて接着剤で固着させ、その上からペンキなどで彩色するという作品を作り始めました。当時、具体のメンバーは画材店で売っている高級品ではなく、身近にある安価な素材を使いどんどん大作を作っていました。そんな中、画材とは関係のない素材から絵が生まれることに驚いた前川は「“こんなに自由に作ってもいいのか”なんて、もう果てしなく、無限の世界に見えてきた。」(*3 原文ママ)と当時の心境を語っています。


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こうして、ドンゴロスの粗野な布地と絵の具の流動的な軌跡、その鮮やかな発色が力強い存在感を示す多くの作品が生み出されていきました。しかし、この作風の最大の特徴は、野性味あふれる素材を洗練されたデザインの視点から構成し、素材の魅力を最大限に引き出している点にあります。前川の作品は野性と知性という、相反する性質がせめぎあいながら均衡し、ある種の緊張感を放ちながら相乗効果となって、素材、つまり物質そのものの実在を観るものに強く印象づけるのです。

1972年の具体解散後、前川はしばらく違う布素材を扱っていましたが、2000年頃から再びドンゴロスによる作品を制作するようになりました。この部屋では、具体に入る前の1956年に描かれた抽象画Work(No.1912102)などと合わせて、近年のドンゴロスによる作品を展示し、前川の創作の原点をみつめます。


初期作品画像:Work (No.1912102), 1956, 45.5×38.0cm, 油彩、カンヴァス

*1 Maekawa, Axel and May Vervoordt Foundation, 2014
*2,3 和歌山県立近代美術館「美術館だより」第283号、1989年

○企画展

前川強
ドンゴロスは生かされている。
色と形と物質による純粋抽象表現で発言する。

会期:2020年2月8日(土)〜6月28日(日)

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